世の中なんてどうでもいい。
他人なんてどうでもいい。
家族でさえどうでもいい。

両親にとってあたしはきっと邪魔な存在以外の何者でもないだろう。あたしができてしまったから結婚しただけで、二人の間に愛はない。


だったらおろせば良かったのに。
あたしの存在なんて別に誰も望んでいなかったんだから。


その証拠にあたしは両親と仲睦まじく過ごした記憶がまるでない。そしてこれからもあの人たちと一緒に過ごすことはない。


大阪の地に一人引っ越してきた。両親はバラバラに海外で仕事をしてる。結構な額の仕送りもくるし、生活には困らない。



あたしはこの地で一人で生きていく。

















転校して一週間が過ぎた。



毎日何の変わり映えもしない生活。
朝のホームルームに出て、気が向いたら授業受けて、気が向かなければサボる。あたしは授業なんて出る必要がないから。


あたしは恐らく世で言うところの天才だ。やらなくてもだいたいはできてしまう。だったらやる必要はない。卒業さえできればいい。



授業をサボってる時、だいたいは屋上か視聴覚室にいる。視聴覚室はなかなかの穴場だ。あまり使われないのか人が来たことはない。
ただ鍵がかかってることがあるのが難点だけど。でも静かで落ち着ける。



今日も一限目からサボることにした。とりあえず視聴覚室に向かってみる。

途中一限目の数学の担当、渡邉センセに遭遇した。



「名字ちゃん、今日も授業出えへんの?オサムちゃん寂しいわー」



きっとそんなことイチミリだって思っちゃいない。でもサボリを堂々と見逃してくれるから渡邉センセは嫌いじゃない。



「センセ、声でっかい」



それだけ言ってすれ違う。



最近では何度も担任に呼び出しをくらうようになった。一度も行ってはいない。

あんなあたしより低能な男に怒られるなんて、考えるだけで反吐が出る。授業に出ろだの、染髪とピアスは校則違反だのとうるさい。

周りを見たらあたしだけじゃないのに。染髪してる奴もピアスつけてる奴も何人も見た。同じクラスにもピアスを五つもつけてる奴がいる。

そいつらが許されてあたしが許されない理由をあの教師は言えるのか。きっと無理だ。



視聴覚室の扉を押す。


ラッキー、今日は鍵が空いてる。


あたしは当たり前のように視聴覚室に入って、適当な席に座る。ポケットから携帯型ゲーム機を取り出してスイッチを入れた。イヤホンをして外の音を完全にシャットアウトする。


そこからはもう飽きるまでひたすらゲームを続ける。これでもかってくらい自分の世界に入り込む。
そして飽きたら寝る。たまには散歩に行く。






これがあたしの日常。


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