M.Nior said






あの反応を見る限り脈はなくてもチャンスはあるんじゃないかと思えた。


格好いいとか意識しとるなんて正直言われ慣れた言葉じゃ。
自分ではどんなに自分の顔を見たってそれ以外の何物でもなくて、格好いいかなんてわからんが。


でも好きな女に格好いいなんて言われて嬉しくないはずがない。
走って逃げ出した名字の顔が赤かったのを俺は見逃さなかった。ちょっとは俺を意識しとると自惚れてええんじゃろうか。



「なんだ丸井は違ったのか、残念」



みょうじに実際どうだったか話せばそんな反応だった。



「残念って…」

「だってテニス部内で女を奪い合うって面白いじゃん」

「人の気もしらんで」



ケーキ屋で二人を見た時俺がどんな気持ちだったか。息が止まるかと思ったぜよ。
それを思い出すと、自分が相当名字を好きなんだと感じて苦笑した。



「いや、イケメン同士に板挟みにされる彼女にあたしは興味湧いてたんだけどね」

「イケメン…」

「テニス部なんてそうでしょ。あ、ジャッカルは中身のみか」



ゲラゲラと豪快に笑うのに女らしさは全然感じない。
でも女らしくない女、みょうじから見ても、俺たちは格好いい部類に入るんか。



「おい、仁王」



珍しく俺の教室に訪ねて来たのは参謀だった。



「お前さんが来るなんて珍しいのぅ」

「蓮二ー!!」



みょうじが立ち上がって参謀に笑顔を向ける。
多分好きとかじゃないじゃろうがみょうじは参謀を気にいっとる。というか懐いとる。



「みょうじ、何か良い情報は入ったか」

「んーや、全然。蓮二は?」

「こっちもだ」



何の話かなんて俺にはわからんが恐らくデータの話かなんかじゃろう。
みょうじが本気で楽しそうに話すのはそれくらいじゃ。



「何か用か?」

「あぁ。みょうじ、すまないが席を外してもらえるか」

「はいよ」



みょうじは文句も言わずに席を立って他のグループに話しに行った。
分け隔てなく誰にでも接するのはあいつのええとこじゃ。だから友達も多い。
昔のみょうじからは考えられんことじゃが。



「名字に接触した柳生はお前か」



いつの話かわからん。名字には柳生とすり替わって何度か会っとるし。



「そうかもしれんし違うかもしれんのぅ」

「名字に好きな男がいるか聞いた柳生はお前なんだな」



あぁ、あれか。柳生がそんなこと聞くはずがないじゃろ。



「名字に、柳生が気があるんじゃないかと聞かれた」

「まさか」

「そう思ったからそう答えておいたが問題はなかったようだな」



ふっと笑ってノートに何かをメモする。さすが俺のやることもわかってるんじゃな。



「お前は本気なのか」

「どうじゃろうな」

「そう言うだろうと思った。話はそれだけだ」



参謀はノートを片手に教室を出て行った。
どうせ俺の気持ちなんて参謀にはバレとる。あいつもまた読めん男じゃき。