練習の休憩中。
ちょっと顔でも洗ってこようかと思い歩いてきた。
ふと、事務所の入り口を見てみるとうろうろしている人がいた。
…誰だろう?
困っているならほってはおけない。
俺は声をかけることにした。
「あの、」
「!」
その人はびっくりした様子で肩を震わせた。
「あ、すみませんっ!」
「あ…いえ、こちらこそごめんなさい。」
そう言って丁寧にお辞儀をしてくれた。
…女の人、みたいだ。
顔も綺麗で、体もすらっとしている。
みとれていると声をかけられた。
「あ、の……椿、大介さん…ですか?」
「え?あ、はい。」
俺に用事?
「その…これを、」
そう言って彼女は包みを渡してきた。
「これは…?」
「差し入れです。よかったら、どうぞ。」
少し顔を赤くして彼女は言った。
「え…と、俺に…ですかっ?」
「はい。…あ、嫌でしたらいいですよっ。」
「い、いえ!とんでもない!ありがとうございます。」
どういたしまして、とふわりと笑った。
その笑顔に不覚にも胸を熱くしてしまう。
「あの…私はこれで。」
「あ…はいっ、」
後ろを向けて歩いていく彼女を呼び止めた。
「あ、あのっ!」
「はい…?」
「お名前は、な何て言うんですかっ?」
「…なまえです。」
「また……明日も来てくれますか…?」
そう言うとまた彼女は俺に向かって微笑んだ。
「もちろんです。」
明日も彼女、なまえさんに会えることに俺は嬉しくなった。
2010/11/25