今日はいつにもまして、風がふいている。
台風の前触れでもあるのだろうか。
そんなことを思って外に出てみる。
飛ばされたものは無いかと確認するためだ。
特に何も置いてないが変なものが飛んできたりしたら邪魔でしょうがない。
そう思って戸をあけたときだった。
さっきよりも強い風がふいた。
そのせいで被っていた帽子が飛んでいってしまった。
「まいったなぁ…。」
そうつぶやいて、取りに行こうと走ろうとしたときだった。
「わわっ!」
飛んでいった方から声が聞こえた。
なまえだった。
「浦原さ〜ん、帽子飛んできましたよ〜!」
帽子を持ってこちらに手を振ってくる。
「なまえさん、ありがとうございます。助かったっス。」
「いえいえ。」
そう言ってなまえは私に笑顔をみせてくれる。
「今日は風が強いっスね。」
「そうですね〜。気をつけてくださいよ?」
分かりました、と言うと彼女は満足したような顔をした。
「いや〜、なまえさんが帽子を拾ってくれてよかったっスよ〜。」
「浦原さん…帽子がない方がかっこいいですよ?」
私の顔をのぞきながら言ってくる。
「そうっスか?」
「はい。」
また彼女は笑顔みせた。
飛んでいった先は…
(風が貴方と出会わせてくれたんでしょうかね。)
2010/11/19