「卒業証書――、」


卒業式が始まった。


…この日がこなければよかったのに。






「銀ちゃぁああんんんっ!!」


神楽ちゃんが銀八先生に抱きつく。
銀八先生の周りは、3Zの生徒でいっぱい。
それぞれ今までありがとう、とかそんなことを口にしている。
私はその光景を、遠くから見ているだけだった。


今日で…何もかもが最後。
だって、もう…銀八先生と会えないんだもの。

恋人でないかぎり、無理。


卒業式が終わり、放課後
私は1人、3Zの教室にいた。

…今日で此処ともお別れだ。
みんながそれぞれの道に歩んでいくのだ。
みんなとの別れ。

そして、先生ともお別れ。


「せんせ…、」


さようなら、


「大好き、でした…っ。」
「俺のこと?」


ドアの方から声が聞こえた。


「銀、八…先生…。」
「どーしたの。泣いちゃって。」
「え、」


自分でも知らないうちに泣いていたみたいだ。
先生がゆっくりと私の方に近づいてくる。

…嫌だ、来ないで。


「…なまえ、」


…やだ、そんな声で私を呼ばないで。
先生と生徒は駄目なのに。
せっかくあきらめたのに。


「っ…ごめんなさい、帰ります。」
「待てよ。」


腕をつかまれる。
振りほどこうとしても、男の人の力には勝てるわけがなくて。


「は、なして…っ、」
「…」


腕を引っ張られる。
そして、先生の腕の中にうまる。


「っせんせ、」
「…俺も、好きだった。」
「っ!……うそ…です。」
「嘘なわけねぇよ。…なまえが好きだ。」
「でも…っ、先生と生徒は、」

「それは違うだろ。」
「?」


先生と目が合った。


「…今日からはもう、生徒じゃない。」


そう言って、先生は私の口を塞いだ。
軽く優しく、甘いキス。


「っふぇ、」
「俺じゃあ…駄目か?」
「う、うぅ…、」
「あー、泣くなよ。」


そ、と服の袖で私の涙をふく。


「返事は?」
「っ…せ、先生が、いいですっ。」


そう言うと、先生は微笑む。


「ありがと。」
「っはい…。」


私たちは、どちらともなく唇を合わせた。




2011.03.15






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