僕は、君を幸せには出来ない――…。



「沖田さんっ、」


不意に僕の名前が呼ばれる。
目を開けるとそこには、大好きななまえちゃんがいた。


「こんなところで寝ていたら、風邪を引いてしまいますよ?」
「…うん、分かってるよ。」


大好きだけど、好き、とは伝えられない。


「病気なんですから、おとなしく部屋で寝ていてください。」
「…そんな大したことじゃないよ。」
「そんなことありますっ!だから――、」

「――げほっ、ゴホッ…!げほっ…!!」


僕は自分の手で口を塞ぐ。


「!!沖田さんっ!!」


なまえちゃんが僕に近寄ってきて、僕の体を支える。
咳がおさまった時に、自分の手を見てみると


血で真っ赤になっていた。


「大丈夫ですかっ?沖田さん。」


心配してなまえちゃんが僕の顔をのぞく。
僕はニッコリと笑って、


「大丈夫だから。」

と言う。

だけど、まだなまえちゃんは心配そうな顔をしている。
それを見て僕は少しため息をもらした。
そして、なまえちゃんの頭の上に自分の手をポンッと置いた。
そしてくしゃくしゃに、撫でてやる。


「大丈夫だって、言ってるでしょ?僕の言うことが信じられない?」
「そんなことは…っ!」
「なら、心配しないで。…ね?」


そう言うと、なまえちゃんは少しおとなしくなった。
すると、後ろから誰かがきた。


「##NAME2##。」


一君だった。


「土方さんが呼んでいる。」
「あ…はい、分かりました。」


そう言ってなまえちゃんは立ち上がる。


――行かないで。ここにいて。
そう言いたいのに……。

一君となまえちゃんを後ろから見送っているとなまえちゃんが戻ってきて、


「――ちゃんと、部屋に戻ってくださいね。」


それだけ言うとなまえちゃんは走って一君の後を追った。




……そうやって、彼女は僕から離れた方がいいのかもしれない。
僕はどうせ、あと少しの寿命だ。
彼女が僕の後をついて来ても、彼女が悲しむだけ。
幸せになんて出来ない。

“好き”なんて、言えない。


悲しい思いなんて、僕はして欲しくなんかない。

だから、君は僕から離れて別の男と幸せに暮らしたらいいんだ。
一緒にいたいけど、いられない。
この思いを伝えたいけど、伝えられない。



僕は、君を幸せに出来ない――…。




2010.08.01




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