「寒いぃぃいいぃ!!」
こんにちは。なまえです。
今日私は、八寒地獄に来ています。
……と言うか、迷子になってます。
本当は八寒地獄の本部に行って資料を渡してくる。
……はずだったのだが。
「迷っちゃったよぉぉおおアタダダダダ。」
あぁ、本当にアタダ、ココバなんて言葉しか言えなくなるもんなんだ。
寒くて死んじゃうよ…。
あ……も、目の前が霞んで……。
「おい、アンタ、大丈夫かよぅ。」
「……え……?」
ここは寝るとこじゃないよぅ、と一言かけられた。
私、いつまに倒れて……。
誰かは分からない鬼?に手を引かれ、先ほどよりは寒くないところに座らせてくれた。
「あ、アンタ八大地獄の鬼だ。」
「え、あ……これ、書類を届けに……。」
「あぁ。アンタ、もう辛そうだし俺が届けてやるよぅ。」
え、でも……と言う前にお姫様抱っこをされ、あっという間に八寒地獄の入口まで連れてこられた。
鬼は優しく私を降ろしてくれた。
「じゃあ、」
「あ、待ってください!」
「何だよぅ。」
「あの……お名前は……?」
「……春一。」
一言そう言って去っていった。
私はしばらくの間、その後ろ姿をじっと見ていた。
「なまえさん、ご苦労様でした。」
閻魔庁に戻って鬼灯さまに報告している間も、春一さんのことが忘れられなかった。
「……なまえさん? どうかしましたか?」
「あ、いえ…………ただ、」
「ただ?」
「八寒地獄で、王子様とあったんです。」
雪の王子様
2013.03.26