ああ。
もうだめだ。
死にそう。

そう思いながら布団の中で体を丸まらせる。
鼻水が止まらなくて喉も痛くて頭がボーッとする。
所謂、風邪をひいてしまいました。
つらい。つらすぎる。
今日は仕事を休むと鬼灯さまに連絡をして目を閉じた。

――コンコンコン。

意識が朦朧としてきたとき、部屋のドアをノックされたことで目が覚めた。
軽く返事をして目線だけドアの方に向ける。
入ってきたのは白澤さまだった。
いつもの笑顔でこちらに近づいてくる。


「あ、はくたくさま……。」
「やぁ、風邪ひいたって聞いてさ。……辛そうだね。」


そう言って彼は私のおでこに手を当てた。
ああ。冷たくて気持ちいい。
「薬は飲んだ?」彼の問いかけに私は頭を横に振る。
彼は微笑んで持っていた鞄から薬を出した。
これはよく効く薬なんだ、と言いながら彼は私の体を起こす。
片腕で支えながら私の口元に薬を近づける。
私は素直にそれを口に含むと、そのまま近くにあった水で薬を流し込んだ。


「……にがい。」
「良薬は口に苦し、だからね。」


飲み終わったのを確認すると彼はまた丁寧に私を寝かせた。
まだ口の中に苦さが残っている。
安静にしておくんだよ、と頭を撫でられた。
その手の暖かさがとても心地よくて自然と頬が緩んだ。
撫でられ続けられていると、もう一度睡魔が襲ってきた。



「いつも頑張ってる君にご褒美だよ。」


そう言って彼の唇が額に触れた。
ああ。優しいな彼は。
なんだか今日はすごく彼に甘えたい、そんな気持ちが芽生えてきた。
私は彼の手をぎゅっと握った。


「なまえちゃん?」
「……ちゅー、してほしいです。」


そう言うと彼は驚いた表情をして、すぐにいつもの笑顔に戻った。
しょうがないな、と彼は呟くと優しく唇を触れさせた。
軽く触れただけだけど、とても気持ちが安心できた。
手離さないでくださいね。と言って目を閉じる。
意識が夢の中に吸いこまれていく中、おやすみと彼の声が聞こえたような気がした。



2015.05.31




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