「ただいま戻りました。」


書類に目を通していると先程頼んだ手伝いを終えたなまえが帰ってきた。
彼女は机の近くまで来ると資料を置いた。
ありがとうございますと声をかけたとき、ふわりといつもとは違う匂いが漂った。


「あの……鬼灯さま?」


彼女の顔をみたままだった私に疑問を持ったのか彼女が私に問いかける。
何でもありませんと謝ると彼女は何かを思い出したのか声を出した。


「そう言えば、さっき白澤さまに会いました。」
「白澤さんと?」
「はい。薬を届けに来たそうです。」


その時にお菓子をもらいました、と嬉しそうに微笑む彼女。
――白澤さんと会っていた。
そう考えただけで、なんだか腹が立ってきた。
鬼灯さまも一度休憩にして一緒に食べますか?、と言って菓子を差し出す彼女の手を握っていた。
その拍子に机の上にあいつから受け取った菓子が落ちた。
そのまま手を引っ張り自分の腕の中に彼女を抱きしめる。
まだあいつの匂いがする。


「なまえさん。」


彼女は耳元で名前を囁くと、びくりと少し体を揺らした。
ぎゅっと彼女の力を入れたら折れてしまいそうな細い体を抱きしめる。


「他の男の匂いなんて、つけないで下さい。」


私の匂いだけつけてほしい。
私だけに微笑んでほしい。
私だけと一緒にいてほしい。
――なまえは私だけのもの。

そう思いながら彼女の唇を塞いだ。




2015.04.14




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