ブランチにしよ

雨の日は二人ともぐったりして気力がない。
今朝はどしゃぶり、昼になっても一向に止む気配はなかった。
空の色も灰色だし、困った二人はベッドから起き上がれなかった。

「シュート…どうしよう。」

「ん…どうした…」

「あのね、起きられない。」

もっともだった。
二人とも目はさえていたが、何となく朝から肌寒くて
シーツにくるまって話したり、二度寝をしたり、
寝顔をみたりぐだぐだとしていた。
オレはそれでも幸せだったが、朝から何も食べていないから
そろそろ限界だった。

「…ちょっと待っててくれ」

「……トイレ?」

「まあ…そんなもんだ…」

オレはベッドから抜け出す。
なんとなく、なまえの行っちゃうの?
という視線に申し訳なさを感じつつ寝室を後にした。

髪を結い直して、冷蔵庫を眺めた。
内訳を確認して唸った。
ブランチには何が最適?
動いてはいないからそこまで腹は減っていない。
でも口にしたいから…。
たまごと食パンを持ち出した。








「いいにおい!」

「来たか。」

後ろから声が聞こえて振り返れば、
寝間着でオレの少し大きいスリッパを履いた
なまえが立っていた。
弱火だったので彼女に近づいて、
額にキスすると恥ずかしそうにそこを手で撫でていた。

「おはよう。」

「もうおそようになっちゃったね…」

「はは。腹はすいてるか」

「においかいだらすいた!」

目をぱっと開いてこっちを見て、
ふんふんとにおいをかいでいる。

「もしかして…フレンチトースト?!」

「ああ…。前に食べたいって言ってただろ。」

「すごい!お手製でつくってもらえるとは!」

フライパンに駆け寄ってなまえは
焼いているのを眺める。
特に変化はないが、焼き上がった色を
楽しそうに見ている。

「なまえ、」

「ん?なあにー?」

オレは一緒に用意していた
クリームをすくって差し出した。
なまえは顔を綻ばせて、
オレが差し出したスプーンを舐めた。

すっかり気を良くしたのか、
もっととオレにせまるなまえ。
ちらっとフライパンを確認して
焦げていないことを確かめる。
再びボウルからクリームをすくい、
スプーンをなまえの方へ向けた。
なまえは再び嬉しそうに
スプーンを口の中へ運ぼうとしたが
オレはそのスプーンをわざと
彼女の口角あたりにぶつけた。

「わ!」

「ああ、すまない。クリームがついたな。」

「えっ…あっシュー…トっ!」

なまえの腰を引き寄せて
スプーンは床へ落とした。
唇ではなく、頬と唇の間についた
クリームを舐めた。
舐める以上に何度か
吸い上げるようにキスすると
腕の中の子どもが酷く熱を帯び始めた。

執拗にキスしていると、なまえはオレの胸をたたいた。
仕方ないから一度唇を離し、額を合わせると
いきなり怒られた。

「も、もう!絶対わざとでしょ…!」

「…ダメ、か…?」

オレの質問には二つ意味があって。
なまえと見つめ合うと、察したらしい。

「あ…嬉しいんだけど、ちょっと、」

「恥ずかしい…?」

「……うん…」

「目を瞑ってても、いい。嫌じゃなかったら…。」

「…瞑らない。」

顔を赤くして微笑むなまえ。
なまえは、あの手この手でオレを喜ばせてくれる。
そっと大事に唇を重ねた。
そこだけ感覚が酷く研ぎすまされて、
艶やかで柔らかい出会う。
離したくはなかったが、なまえは緊張しすぎて
オレの服を必死に引っ張り、破ってしまいそうな
勢いだったので顔をゆっくり離した。
伏し目がちに見られた顔は熱っぽく、
まだドキドキしているのがわかる表情だった。
きっとオレは相変わらず固い表情してるんだろうな。

「はじめて、口でちゅーしちゃったね…。」

なまえは照れておどけた口調で誤摩化した。
でも瞳だけやっぱり真面目な目つきで、
そこに尋ねた。

「…もっと。」

「!」

わがままを言って、
こっそりフライパンの火を止めた。


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