朝ご飯

朝に何を食べるかによって、普段の生活が見えるときがある。

「えーーっ!朝それしか食べないの!?いつも?」

「…朝は、忙しい時が多いから…」

いつも何を食べているのか聞かれて答えれば、
オレの小さな奥さんはわかりやすく怒った。

「もう!だからシュートは細いんだよー!」

「いや、でもそれ以外は食べてる」

「うーん…ほんと?じゃあよくわかんないけど…私がいつも食べてるのでいい?」

なまえはエプロンを着けながらオレに振り返って尋ねた。
その姿をキッチンへ見送ってから頼んだ。

冷蔵庫をばたばたと開ける音に一体何が出てくるのか期待をする。
立ち上がって手伝いでもしようとおもえば、
すぐに座ってて!すぐできる、と張り切った声が聞こえた。
オレは小さく笑いながらベランダへ出た。

いつも住んでいる家と構造や間取りは同じだったが
ここはもっと明るい。
ベランダには芝生、なまえの好きな花、
オレの好きな読書が出来るテーブルとチェア。
風が吹いて木が大きく体を震わせた。
葉音がこすれる一枚一枚がなまえを物語っていた。
本当にここは桃源郷なんだ、と考えていればオレを呼ぶ声がした。

「たまごとか、勝手に使っちゃった。」

「いい、好きにつかってくれ…。できたのか?」

いい匂いがしてベランダからリビングへ戻る。
なまえは少し恥ずかしそうにウーンと唸って
何枚か皿を持って食卓へそっと置いた。
オレはキッチンに入って消されたばかりのガスコンロと
フライパンを見て、思わず声を上げた。

「美味しそうにできてるじゃないか。ちゃんと。」

「大好きなんだけどね、作るのは初めてだからちょっと心配!」

こんがり焼き上がったフレンチトーストがあった。
甘すぎず固すぎない、柔らかなトーストが皿に並べられた。
オレは確かまだあったはずの牛乳を持ってきて
コップを並べた。
私がやるのに、という声を無視して彼女へコップへ注いだ牛乳を渡した。

「朝、牛乳は飲むのか?」

「飲む日もあるよ、毎日じゃない。でも…」

彼女は一口飲んだ。
つめたい、って顔にでていたが目を開けて
にっこり笑った。

「おいしい!」

オレも口角が上がって戻らなくなってしまった。



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