夜が来る

カーテンをしめた。
窓の外は、少しの光も見えない暗闇だったから。

なまえをベッドに運んだ。
わずかに開いている目を見つめて、
シーツをそっとかけた。
なまえは疲れた顔をしていたが、
やがて布団の中が暖かくなると
ゆっくりこっちを向いて笑った。

「…大変。」

「そうだな。」

なにが、とは聞かなかった。
悲しい笑顔だったから、オレは隣に寝そべった。
髪の毛をわけてやってひらかれた額に
そっとキスを落とした。

「まだ部屋はある?」

「ああ、ある…。」

「シュートも、ちゃんといる?」

手を触れて応えた。
オレは今しか、この瞬間しかないと思った。
次の刹那には何億光年かけてもなまえには
辿り着けないだろうと思うから。

「なまえ」

彼女も手で応えるだけだった。


シーツの中に潜り込んで、なまえの顔の横に肘をついて
四つん這いになった。
冷たい空気がシーツの中に染み渡って
寒い、となまえは笑った。
唇に触れるようにキスした。
オレはなんて渇いていて、薄い唇なんだろう。
なまえがあんまりにも柔らかい唇をしているから
痛くないか、傷つけないかしきりに心配になった。
すぐ離れようとしたら、なまえは首に手を回して
キスをせがんだ。
何度も行き交う逢瀬の中で、手が無意識のうちに彼女の首元や
服の襟を遊んでいた。
まだそんなことしかしていないのに彼女の体はオレの体温を
上回るくらい温かくなっていた。
なまえから小さな声が上がって、腕が彼女の頂きに触れていた事に気がついた。
だめだな、慣れないことすると。

「かわいい」

一言漏らせば恥ずかしそうに、可愛くない、と言い返された。
脈打つ心臓が早まった。
かぶりつくように首や胸元にキスして、
空いた手で彼女の体に触れた。
途端押し殺すように吐息や小さな声が溢れて、
泣いているようになまえは体を震わせた。
どうしても下腹部の抑えがきかなくて、
彼女の太ももにそれが服越しに押し付けられ
罪悪感やら背徳感に襲われた。
先端が彼女の肉質を教えてくれる。
背筋まで伝わる感覚に支配されそうになる。

「なまえ、腰」

「えっ」

拍子抜けしたなまえの声を聞きながら
彼女の寝間着の下を降ろした。
きっちり下に行かず、太ももの中途で
止まってしまったのが
さらにそそられた。

「や、ちょっとまって」

「……怖いか?」

「ん…うん…ちょっとだけ。」

「悪い…」

「あっ違うの、
全然そんなつもりなくって…っ!」

「じゃあ良かった。」

人差し指で彼女の恥部を
下着越しに撫であげた。
オレがどうするまでもなく、
そこはしっとりとしていた。

真っ赤な顔で罵られたが関係なかった。
しばらく下着越しに指を上下させて
彼女の反応を楽しみ、
何も言わずに下着をずらして指を入れた。
彼女は背中を反らせて、
さっきよりもはっきりと声を上げた。
可愛くて、たまらなかった。
動かさないでじっと見ていると
なまえはオレに抱きついた。

「すごい…ね、」

「……」

「へんな、かんじ。」

見上げたなまえの顔は初めて見る顔だった。
抱きつかれたまま、指を奥で曲げ、
潤いを感じて激しく突くように中を叩いた。
なまえももう気にせず嬌声をあげた。
下着は溢れたよだれを染み渡らせることに勤しんでいた。
なまえは顔を上気させ、目には涙を浮かべていた。


オレに比べたら本当に彼女の体は小さかった。
生まれてきた時から、こうなのだろうか。
それとも今の今まですくすくと成長した結果もやはり
こうなのだろうか。

やさしさは、あかるさは、とうとさや、いつくしさは。
一体、いつ頃彼女はこうしてオレの目の前に現れて
形作って、一人の人間の、なまえとして
生きてきたのだろう。



オレの名前を呼んで
果ててしまった彼女を抱きしめて、
あいしてると言った。
そんなことしかオレにはできない。
ふとしたとき足下に渦巻く虚無感が
今訪れてしまった。


なまえはゆっくりオレを見て、
荒れた呼吸のまま、ベッドに体を完全に預けた。
彼女の頭を撫でてじっとみつめていた。
シーツは二人分の汗をたっぷりと吸い込んで
熱い様な、冷たい様な、不思議な感触だった。

双眸に見つめられて動けなくなっているオレに
眉をひそめてなまえは言う。

この一ヶ月、一度だって
なまえを見ない日はなかった。



「さよならって言って。
そしたら上手く眠れる気がする。」

「…言えるわけない。」

言えるわけがない。

「だめだよ、言って。」

この後どうなるかなんて、考えたくない。

「…さよなら、またな。」

人の気も知らないふりを装って。

「あ、ずるい…でも大好きだよ。」



そうしてなまえは目を閉じた。


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