同じ調べに手を組んで

帰る場所


まえもくじつづき




リオウは道場の裏手にある大きな木の根元を掘り起こしていた。
そこから出てきたのは幼い絵心をはじめとする小さな財産。
 
僕たちの世界はこれがすべてだった。
少しのお金と、三人が居れば、何だって出来ると思っていた。
リオウは幼いすべてを抱きしめて、無くなってしまったものに別れを告げた。
 
振り返ると、慰めるようにほほえみかけてくるティルの姿があった。
リオウは手についた土を払いながら、それに近づく。
 
「ナナミのところに、帰らなくていいの?」
 
それは優しく、辛らつな言葉だ。リオウは首を横に振る。
 
「ジョウイがいなくなってしまった今、ナナミに合わせる顔をぼくは持てません。このまま、そうっとしておこうと思います」
「そう……」
 
ティルの右手が、リオウの右手に優しく触れる。
暖かなそれは、リオウの心臓をきゅっと縮こまらせた。
 
「君の戦いは、いつまで続く?」
「ぼくの戦いは、今終わりました」
 
リオウの言葉に、ティルの目が優しく光る。
いつの間にか深い悲しみの落ち着いているその瞳は、新しい魅力を持ってリオウに印象づけた。
 
「ティルさんの願い事はなんですか」
「うん……リオウが落ち着いてからでいいや……じゃあ、グレッグミンスターに帰ろう?」
「え?」
 
ティルの言葉に、リオウは問い返した。
確かに、今城へ戻れば統治者として担ぎ上げられるだろう。それを踏まえての言葉なのか、考えのまとまる前に、ティルはその手を握ったまま歩き出した。
 
ぼくはジョウイが死んで、真の紋章の宿主になりました。
悲しいはずなのに、なぜだろう、どこか嬉しいんです。
あなたと対等になれた、そんな気がして。
 
リオウはそんな素直な感情をティルに伝えようとはしなかった。
似たような感覚を彼も抱いている、と右手がそう告げていたからだ。


×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -