同じ調べに手を組んで

魂よ昇りゆけ


まえもくじつづき




天山の峠。
リオウがジョウイと約束した場所だという。
ルルノイエは崩壊し、この国は同盟軍が支配する、新たな国となるのだろう。
そのなかで、皇王ジョウイの姿だけをルルノイエでとらえることが出来なかった。
故に、リオウはそこに親友が居ると考えたのだろう。
 
君の願い事は終わっていないから、とついてきたティルの目の前で、少年達は武器を構えている。
これもまた寸劇か? 目を細めて向かい合う二人を見つめた。
 
「リオウ、僕を倒してくれ」
「いやだ、どうして殺さないといけないんだ、それが国の道理だって? ふざけるな!」
 
ジョウイはすべてにおいて激しさを持ち、リオウはただ言葉のみが激しさを持っていた。
 
「倒せ、倒すんだ! リオウ!」
 
ジョウイの武器はティルの持つものに似ていて不快感を生んだ。それがリオウにたたきつけられる。
トンファーで防御しきれていない上腕部に、紫の鬱血がにじみあがった。
 
「いやだ! 倒したくないんだ、そんなことをしても、何にもならないよ!」
 
何にもならないことは、ないだろう。
ティルの細まる瞳は、ジョウイの明らかな体力の低下を静かに吟味する。
獣の紋章を押さえ込むのに黒き刃を使い、命を削られた結果だ。
この光景は、ソウルイーターと、僕の求めていたものに通ずる。
ジョウイは攻撃を受けることなく、膝をついた。
 
リオウは慌てて駆け寄ると、その弛緩した身体を支える。
 
「右手を……リオウ」
「どうして……どうして!」
「僕たちの紋章は、二つ分かれていては意味を成さないんだ。一つとなって、やっと始まることが出来る。僕は君を死なせたくないんだ」
「やめてよジョウイ! 聞きたくない、ジョウイは死なない!」
 
ジョウイはティルに視線を向け、射貫くように笑った。
そしてリオウの右手を乱暴につかむ。
 
「我が黒き刃の紋章よ、今ひとつになれ……!」
 
リオウの意志とは無関係に、紋章は重なり、新たな文様を描く。
力尽きうなだれるジョウイを前に、リオウは泣き叫んだ。
その光景を努めて冷静に見ながら、ティルはジョウイの亡骸に悪態をつく。
 
僕のソウルイーターは君の魂を刈り取らない。
君はそれを願っていたんだろう、そうやって、リオウのそばにいようと考えたんだろう。
浅はかすぎる。
僕とソウルイーターの考えは一致していてね。
君の魂はとらないよ。どうぞ安らかに転生するがいい。
 
ティルは泣き崩れるもう一方に視線を移した。
リオウの肩に手を置き、振り返る涙を浮かべたその表情に迷わず腕を伸ばし抱きしめる。
 
「ぼくは、ぼくは親友を!」
「リオウ、君は殺していない。むしろ、これは彼の寿命だったんだ」
 
君にもう一つの力を授けよう。それは剣と盾を掲げ持ち、輝く僕の始まりになる。


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