必要とする場所はそこに

眠りを捧げて


まえもくじつづき





リオウは宿のベッドに腰を下ろして、右手をさする。
城にティルの従者が血相を変えて飛び込んできたときは本当に驚いた。
トランで何かあったのかと訊ねれば、主人が眠れないのだという。
眠れるためにあなたの力が必要なんです、といわれたとき、なぜかリオウの胸の中心が熱くなった。
右手もそれに反応するように暖かな熱を放つ。
拒絶する瞳、無愛想な態度。会話もしたくないほど自分を嫌っている彼に必要とされていることが、第三者からの要望であってもリオウには嬉しかった。
 
きっとお前の力だろう、とリオウは右手を室内灯にかざす。
きらきらと輝く盾は、否定しているようにも、肯定しているようにも見えた。
 
ティルの手のひらとリオウの手のひらを夜闇の間重ねる、その行為を忙しい執務の間にこなしていった。
眠る表情から見て取れるほど、ティルの眠りに手を貸すようになってから、血色が良くなっているように思う。
 
グレミオも、自分がこうしてやっていることをティルに伝えていないらしく、リオウは安心していた。
ティルの悪夢はどこからやってくるのだろう。
それをぬぐい去ることが出来ればいいのに。
手のひらから伝わる温度に、リオウもひとときの眠りに落ちた。


×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -