その場所を壊していく

涙の光


まえもくじつづき




同盟軍が一丸となり、その命をも賭して戦った戦果が、目の前に倒れた狂皇子だった。
リオウは同盟軍の勝利の歓声を背中に、うつぶせに倒れたルカの手を取った。
そこには悲しみも憎しみもなく、ただゆっくりと冷えていく命の残滓だけがあった。
 
ルカの表情は、熾烈な戦いであったにもかかわらず、穏やかだ。
頬を流れる血の跡をぬぐってやりながら、いつかの問いかけが間違いであったことをリオウは理解した。
 
「ルカ・ブライトには、泣く場所がちゃんとあったんだね。そこに早く行きたいから、あなたは壊してきたんだね」
 
触れていた手のひらが、死後硬直が始まったのかぴくりと動き、リオウのそれを握るようなかたちになる。
 
「おやすみなさい。ぼくは、あなたの言う憎しみの荒野を、緑でいっぱいに出来るよう頑張ろうと思います」
 
リオウは軍師にルカ・ブライトの遺体を丁重に清め、扱い、ルルノイエへ送り届けるよう指示すると、
闇の奥の虚空を見つめた。
 
ぼくがどうしてリーダーになろうと思ったのか、わかったような気がするよ、ジョウイ。
みんなの落ち着いて泣ける場所を守りたいと思ったんだ。
ぼくが誰かの涙をぬぐう一片の布になれるならと。
お互いにいる場所は違っても、同じことを考えたから、君はハイランドにいるんだね。
 
「ルカ・ブライトと戦わせてくれて、ありがとう」
 
リオウのつぶやいた言葉に、闇の奥の空気が震えるような動きを見せた。


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