今日もどこかで未来が(ワタバナのふたり)
04
町中大騒ぎだったのは、古い文明が世界の終わりを予言していたから。
リオウはそれを横目に食材や日用品を買いだした。
もちろん、世界の終わりの向こう側まで。
帰ってきていつもの食事風景へ、リオウはその無言の空間に切り出してみた。
「明日、世界が終わるそうですよ」
「ああ、古い文明の予言だね」
「ご存じだったんですか」
「そりゃ、あれだけ騒がれるとね。週間天気予報図なんて隕石のマークじゃないか」
「はは……」
どうやら目の前の親友には興味がないらしい。
リオウは不発だったかとスープに視線を落とした。
「古い文明は知らなかっただろうから」
「え?」
「明日がもう始まってる国があるってことをさ。それに君が僕のそばに居るんだ、世界が終わるはずがないだろう?」
リオウの反応を見るように少し待ってからティルは満足そうに笑う。
久々に赤くなった顔を見た、と。
世界は終わらなかったけど、長く続く生活に彩りが添えられた。
ならば。
たまに終わって、また始まればいい。
リオウはそう考えて、永く生きてると罰当たりなこと考えるなあとティルと一緒に笑ったのだった。
そして今日もどこかで未来が。