どうかぼくをころしてください

+零四▼殺百撰


まえもくじ|おわり




傷つけずに機嫌を損ね、思わず殺したくなるような行為を求めて、リオウは今日も新しい国を走り回って情報収集にいそしんでいる。






「相手を傷つけずに殺意を抱かせる? 不躾な対応で良いんじゃないか」






ある人はそう言う。






「不躾な対応は出来ないよ、相手は皇子様だもの」






と振り出しに戻る。






「悪口でも言ったら? この鬼畜ゴリラとか」






ある人はそう言う。






「そんなの思いつかないし、言葉はやっぱりだめだよ」






と振り出しに戻る。






「行為で嫌われる? 男が男にされて嫌なことが良いんだよね」






ある人はそう言う。






「そう、それだよ、でも、怪我させたりするんじゃなくて、なんかこう、優しい感じで」






ようやっと進展か。






「それなら、シーナがよく知ってるんじゃない? あいついっつも男相手に怒ってばっかりだしさ」






ということで、シーナに聞いた方法で、今日、リオウはルカの機嫌を損ね、殺されようとしていた。
国は育ち、ルカの手腕もあり、ハルモニアとの国交も今のところ安定している。
もうリオウの居場所が無くなったって誰も困らない。
今こそ決行の時! と考えたのだ。






疲れたようすのルカが自室に帰っていくのを見届け、突撃開始。






「ルカ皇子、リオウです! 入れてください!」
「……なんだ」






面倒くさそうに扉を開けるその瞬間を見計らい、リオウは飛び込んだ。













「殺したくなりましたか?」






頬を上気させてにこにこ笑う姿に、ルカは意気消沈してしまった。
なのに、どこか疲れが飛んだような錯覚さえ起こってきて、さらに困ってしまっていた。






「これをしたら殺されると思ったのか」
「はい! 男が男にして無礼な行動で、なおかつ傷つけない方法だってシーナに教えてもらいました!」
「シーナか……」






サウスウィンドウでナンパにいそしんでいたことをあとでアップルに報告しておいてやろう、とルカは決めた。
それだけですむことをありがたく思うがいい、ともひとりごちた。






「あの……皇子?」
「今回は残念だったな。今日は疲れていたが機嫌は悪くなかったのでな。特に何も感じん」
「そう、ですか……」
「次は機嫌が悪い時にやってみろ」
「そう、ですよね、はい! わかりました! がんばります!!」






いっぱいの笑顔を残してリオウは嵐が去るように部屋を出て行った。
残されたルカは盛大な溜息をついて、どうやって機嫌を悪くするか考えていた。






機嫌が悪い時にリオウから無礼な行動を受けたら、そのときの感情で全てを決めようと考える。
案外、難しくて面倒なことだ。しかし、シーナにはまったくその方面への考えが及ばないらしい。





特定の男に口づけされて喜ぶ男も居るのだと。





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