滑稽な平行世界論理
滑稽な一般論-06-
真っ白な壁が高い日差しを浴びて輝き、商店街では屋台から屋台へ、
華やかな正方形の旗が連なり風になびいている。
行き交う人々の声はみずみずしく空気を響かせ、
いつでも祭りが行われているように感じる。
「数百年過ぎてもどんどん潤ってないか、この国」
「そうですね……ぼくが居た時より、建物も道もきれいになってますし、街灯が自動点灯になってるとか、エレベーターがあるとか……潤いに潤ってますね」
「どう? 気持ちとしては」
「すごく、誇らしいです」
ルカが作り上げ、次代にバトンを渡し、それがずっと繁栄を続けている……みたかったものがこうしてみられて、胸がいっぱいになる。
「最後の最後に持ってきた甲斐があるってかんじかな?」
「ほんと、そのとおり、長い長い旅でした」
「ひとりよりふたりのほうが良かっただろ?」
「ええ、誘ってくれてありがとうございます、ティルさん」
「ううん、こちらこそ。この二百年、毎日が楽しかったのはリオウのおかげだよ」
「そんな、持ち上げないでくださいよ」
あわてて謙遜すると、ティルさんは、ふ、と悲しい表情になる。
「どうしました?」
「だからまあ、正直、惜しいんだけどね」
「何が……?」
ぼくの疑問には答えずに、ティルさんはガイドマップを広げてみせる。
「明日はルルノイエ栄光祭。現皇王の姿が見られるチャンスだよ」
「ほ、本当ですか!?」
ティルさんの肩にくっついて、催し物の欄を一緒に眺めていく。
「現王の名前もルカなんだ……名前を世襲制にしたのかな」
「リオウのためだったりして」
「じょ、冗談やめてくださいよ!」
ぱしん、と肩を叩いてみせると声を引っ込めるようにひいひい笑われる。
なんだか、ルルノイエにきてからのティルさんがいつも以上に元気に見えるのは、
ぼくが嬉しいからなのかな。
ここに来るまでは怖くて、どきどきして、不安だったけど、
来てみれば穏やかな気持ちで、すべてがありがたく、愛おしくて仕方がない。
キャロの街以上に、ぼくはこの城下町を大切に思っているのだろう。
予約した宿の一室は、
花柄と緑のストライプの壁紙でちょっと少女趣味な感じがする。
それに気圧されながらも奥にある窓を開くと目の前に城があった。
あそこに、今のルカが居る……だめだな、時の流れって。
涙腺が緩くなってしまって、少しのことで涙が出てくる。
明日の栄光祭は、王を中心としたパレードが行われ、
世界中から集まった人々でそれはそれは盛況な一幕らしい。
なかなか取れない宿をとれたお客さんはラッキーだと、
宿主さんは誇らしげに語ってくれた。
本当に幸運だよ、ぼくは……
こうして、大切なひとの営みを見守っていけるんだから。