滑稽な平行世界論理
滑稽な一般論-04-
「どうしてそれだけでぼくの内情をルカも知っていると思ったんですか」
「だって、彼、君のこと好きでしょ?」
「は」
かわいた笑いが出てしまい、とっさに口を隠す。それに笑ってティルさんは続ける。
「好きで好きでたまらないならもう国を挙げて探してるでしょ、そんな話聞いたらさ」
「えっと、好きじゃないからってのも考慮してくれましたか」
「考慮するまでもないよ。あの人、ずっと握り拳を振るわせて耐えてたんだから」
胸がぎゅっとなる。
ぼくのことを考えてくれているんだ、身勝手に、何も言わずに消えたぼくに対して。
そしてわかってくれたんだ……ぼくの選んだ答えを。
それだけで自分が報われた心地になる。
「……十分です、もう」
「え? 何が?」
ふと出た言葉に聞き返してくれるティルさんに笑いかけて、ゆっくり息を吐いた。
「ナナミもジョウイもそのうち諦めるでしょうし、ルカも、ぼくのことをわかってくれてる……それで十分なんです」
ぼくのとなりで静かに話を聞いていたレックナート様が、ふわっとぼくを抱きしめてくれた。
ふしぎなお香の匂いが、緊張をほぐしていくようだ。
「……リオウ、あなたは強いのね……」
「なんか、その言葉けっこうみんなに言われてるんですよね……」
ティルさんが大きく笑った。