滑稽な平行世界論理
滑稽な一般論-03-
「やあ、……ナナミ、だっけ。どうしたの、そんなに慌てて」
「え!? あ。ティルさん!? ちょっと皇子様に話があるの!」
「一体どうしたのさ」
「リオウが神隠しにあったの!!」
「……は?」
ナナミの話を聞きながら、ティルさんは合点がいった。
クソナマイキな風使いの美少年、生き神になるリオウ……夜に話した内容と合わさる、と。
それでもナナミのせわしなさが面白かったので何も言わず付いていったという。
……ルカにも会いたかったから、と。
ルカ皇子を前に、ナナミはガンガンと、まくしたてるまくしたてる。
皇子が居ながら神隠しとは何事だ、と。
皇子は何も言わず、ただ、知らぬ存ぜぬを貫き通すだけ。
ティルさんはへんだな、と思いながらルカを見ていた。
ナナミが疲れて帰っていく中、ルカの溜息をめざとく見つけたティルさんは、
彼がぼくのことを少なからず理解していると考えた。
ナナミはただの神隠しだと思っていて、ティルさんも、ルカも、ぼくの状況を知っている……
だからこそ、ぼくの家族との間に妙な感情の行き違いがあるのだろう。
姉はなんとしても探し出すと言い、皇子はただそれを黙って許容しただけだったから、と。