滑稽な平行世界論理

滑稽な矛盾論-24-


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……心は動いているか、正常だ。音も規則正しく動いてる。
体中が熱くてけだるくて、べたべたして、変な匂い。
隅々までしゃぶられて咬まれたんだから仕方がない……洗い流したいけど、それよりも止まらない涙を何とかしたい。


「ぼくは……お前が好きだよ、愛してるよ……」


つぶやいて、ルカが眠っていることを確認して、ふるえる息を吸って続ける。


「母親に、言われたからじゃない、ぼくがお前と接して見つけた感情だ……ルカに非はない……」
「この思いが通じ合っても、男同士だからとかいう以前に、問題があって……」
「お前より、ぼくは長く生きてしまう、それが、何よりもつらい……」
「ルカの王道を断絶してまで手に入るものは結局不幸でしかないんだ、それを、わかってほしい……」
「長く生きるなら、ルカからつながるハイランドの栄光を遠くで見つめた方が、何倍も、幸せなんじゃないかって、思うんだ……」


これは全部ぼくのひとりよがりだ。だから、聞こえなくて良い。


「ルカ、お前はお前の王道をいけ。ぼくはそれを見守る。恋よりも愛よりも深いところで、ずっと、命続くかぎり」


だから、お別れだ、ルカ・ブライト。
傲慢で冷徹で残忍なお前がぼくでやさしく変わったというのなら、ひとりでも、変われるはずだ。
ぼくの言葉にのぼせて錯覚した愛は捨てろ。そして本当に愛する人を見つけろ。


好きだから離れる、ナナミの好きな恋愛小説、二律背反のかたまり、固定概念のしこり。
一緒に捨ててしまおう、一緒に新しい自分になるために。


「さよなら、ルカ・ブライト」


滑稽なひとりだけのお別れ。
身なりを整えてそっと部屋を出る、真っ暗闇の、夜明け前。


ぼくにふさわしい門出だ。






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