滑稽な平行世界論理

滑稽な対人論-08-


まえもくじつづき



ルカが自分を選ぶと宣言したあと、それはもういろいろあった。
諸外国のお姫様たちが一斉に皇王に詰め寄って泣きはじめたり、
来賓の方々は妙に祝福してきたり。


ぼくはただもうげんなりと、殴る気力も失せてその会場から外に出る。
長い長い廊下の向こうは真っ暗で、パーティー会場とのコントラストが激しい。

もう夜になっていたのか、と時間の経過を感じながら
壁に背をつけて肺の中の重い空気をゆっくりとはき出した。


「リオウ殿」
「……クラウス」


無言でさしだしてくれるグラス・ジュースをのそりと受けとり、一気に飲み下した。
こういうときに飲みたいのはやっぱりお酒だけど、クラウスがそれを持ってきてくれるわけがないのだ。
甘さが喉を通っていく感触にひと息つく。


「リオウ殿は、星見の予言者でいらしたんですね」
「ああ、うん、半分だけね、その一族なんだよ」


「先ほどの予言には驚かされました。まるで神をそこに見たような、神聖な気持ちで」
「や、やめてよ、そんな大層なもんじゃないから」


レックナート様は大層なお方だけど。


「大変、お疲れのようですね」
「そりゃあね、説得しに来たつもりが利用されちゃうんだから落ちこむし疲れちゃうよ」


おもいっきり溜息をついて近くのテーブルに空のグラスをおいた。
両腕を脱力させて、ブラブラと振ってみる。


「ルカ皇子のそばに居てくださるんですか」
「……さあ、どうだろう」


この場限りの逃げ口上ならばぼくはまたキャロに戻れる。
道場再建の続きを、気の置けない三人でたのしくやっていけるだろう。

もし奴のそばに居なければならなくなったら、ナナミやジョウイとはお別れだ。
そうするならちょっと暇をもらわなくちゃ。あいさつしたいし、荷造りもしたいし……

何を真剣に考えているんだろう、ぼくは。


「私としては、歓迎します」
「なんでまた」


「あなたがいるときのルカ様は、なにか、こう、隙があるような感じがするのです」
「隙? そんなのあったら逆に危なくない?」


「リオウ殿に引っぱられて、私たちでも皇子を支えられるんじゃないかと、錯覚できるんです」
「錯覚、ねえ……」


自分は支えようとしてことごとく蹴散らされてるような気がするんだけど、と苦笑してみせると、会場の扉が開いた。




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