滑稽な平行世界論理

滑稽な確率論-03-


まえもくじつぎ




暗闇の中にたくさんの気配が充満してきたところで、ラウド隊長に言葉を促した。


「る、るるる、ルカ様あ〜……」


小さくかすれる声に、草のこすれる音が重なった。


「どうしたラウド。情けない声を出すな」


狼の威嚇するような威圧感を伴った言葉が耳に伝わる。
闇の中でもわかる、その強大な体躯。


「後ろのガキはなんだ」


気づかれたその言葉にジョウイが震えた。萎縮している、無理もない。どう育てばこの重苦しい雰囲気を持つようになるのか。空気だけで負けた気分になってしまう。
それじゃだめだ。そのままじゃ殺される。


「ルカ・ブライト、お前の計画は潰させてもらった」
「なんだと?」
「子供たちは全員街へ帰った。少年歩兵隊を都市同盟が奇襲したから弔い合戦、なんて計画、子供だましだ、甘いんだよ!」
「貴様ァ!!」


ラウド隊長ごと斬り殺すつもりだ。振り上げた剣に迷いはない。
利き腕のトンファーをルカ・ブライトに投げつける。
難無くそれを割り崩す間に、隊長の携えていた剣を引き抜き、ロープを切る。そして体を突き飛ばす。


「ジョウイ! 隊長を頼む!」


声に出した瞬間切っ先が降りかかる。それを残っていたトンファーで受け止める。防御用に鉄の芯が埋め込まれているほうのトンファーに一瞬顔色を変えたところに剣を振りかざす。
甲冑でいとも簡単にはじかれるがその反動で間合いをとる。


何という力だろうか。トンファーを持つ手がしびれて今にも落としてしまいそうになる。
甘く見ていた。自分の体格の未熟さに涙がにじむ。でもここで折れてしまっては、三人とも何か不名誉なことを押しつけられて殺される。そこから無理矢理にでも戦争を起こすはずだ。


「身分をわきまえて行動するんだな」


ルカ・ブライトの言葉が心を傷つけてくる。
そんなことはわかっている、と睨み付ければ、彼の右手から細い炎が螺旋を描きたちあがる。
紋章攻撃、それを防ぐ手立ては今の自分にはない。形見の紋章札は、この場面では役に立ちそうもない。防御の構えで運を天に任せるだけだ。


「ジョウイ、隊長、ここは良いから速く逃げるんだ! ルカ以外ならジョウイの力でも十分切り抜けられる! はやく!」


声を荒げるはしからルカ・ブライトが右手を振り上げた。炎の竜がこちらへ迷うことなく飛び込んでくる。



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テーマ「人外ファンタジー」
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