戦線前線アドゥ・リビトゥム

04.城−なんかん−門


まえもくじつぎ





一日の疲れをサジャで落とし、リオウたちは惜しむ村人たちに別れを告げ、ルルノイエの城門までやってきていた。


高くそびえるその門塀は、自分たちのやっていることがいかに浅はかなものなのか、静かに諭してくるかのようである。
実際、ルルノイエに入れたとしても、そこから続く足がかりがないのだ。


リオウは壁を見上げて顔を青くしている姉の手を取り、アイリたちのところへ戻ろうと言おうとした。その前にナナミがこちらを振り返り、震えながらも精一杯の笑顔を広げて、がんばろうね、と声をかけてくる。
こうされては自分には何も言えない、とリオウは早々に降参し、動きのぎこちない姉に従い、門番兵の前に立ったのだった。


「どこの旅芸人だ」
「え、えと、ぐ、ぐら」
「グラスランドです」


「どこから来た」
「ま、まり、まり」
「マリードから下ってサジャからここまでやってきました」


元来嘘のつけないナナミに変わって、リオウが答えていく。
その間も兵士はリオウの顔をじっくりと見ながら、不思議そうな顔を浮かべている。
ばれたかもしれない、と冷や汗をかいていると、兵士はその顔なら信用しても良さそうだ、とルルノイエへと通してくれた。


完全に門塀から離れ、洗練された町並みに体に溶け込ませるとナナミは息を思いっきりはき出して笑う。


「さっすが、美人姉妹! 楽勝だったね!」


うなずいて見せながらも、リオウには引っかかるところがあった。この顔に免じて、とはどういう意味だろうか。ナナミも言っていたように、ぼくは誰かに似ていると言うことなのか。
自問自答を繰り返すリオウをよそに、ナナミは物珍しそうに商店街を冷やかしていく。


「ジョウイに会えるかどうかは、追々考えていこうよ、焦っても仕方ないんだし」


ナナミは無事にここまでこれたことに気が大きくなっているのか、余裕のある言葉を唱える。
リオウは早々に疲れていたので、城門前の憩いの広場で休んでいると言うことを伝える。ナナミは了解したとたんに商店街に姿を消した。


きらびやかな装飾品や服の並ぶ町並みは魅力的なのだろう。ナナミの浮かれようも大目に見てやるか、とリオウもリオウなりに余裕を見せると、腰を寄せたベンチからジョウイがいるであろう城を見上げた。
なんと大きな城だろうか。皇都と呼ばれるだけのことはある。こんなところと自分は戦っているのかと、忘れていた寒気を再び感じた。




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