花火大会

ドーン、パラパラパラ…


空に浮かぶ大きな花、なんて良く言われるけれど、うん、その通りだ。
ぼうっと空を見上げて、大きく手を広げる花火を眺める。
今日は花火大会だ。
よって辺りは喧騒に包まれ、私も、そして私に付き添ってくれている太宰さんも…その一部と化している。
しかし喧騒になんて負けないほど大きい音を立てて花開くものだから、まるで世界に私と、そして太宰さんしかいないんじゃないかと思わせる。我ながら、笑ってしまう。
きっと太宰さんは、迷惑だろうに。


「綺麗だねぇ」


ふと隣を見ると、浴衣姿の太宰さんがこちらを見て微笑んでいる。私が無理を言って着て来て貰ったのだ。太宰さんは快く受けてくれたけど、その優しさに甘え過ぎてしまう私がいる。何てずるいんだろう。


「そうですね!」


花火に照らされてきらきらした太宰さんが綺麗で、声が上擦ってしまった。恥ずかしい。


「花火のせいかなぁ、零時ちゃんの眼や髪が、色鮮やかに輝いて見えるんだ」


心を読まれたのではないか、なんて素っ頓狂な事を考えてしまった。例え偶然であれども、太宰さんと同じ事を考えていたなんてロマンチックだ。
笑われるかもしれないが、私だって一女性なのだ。好意を寄せる人間と、少しでも関わり合えれば嬉しい。しかし一人間としては、もっと欲しがってしまう。
そんな気持ちを振り払うように、太宰さんに話しかけた。何だっていい。この汚い気持ちを、誤魔化せれば。


「花火って、確かに凄く綺麗ですけど…何だか、寂しい気持ちになります」


枯れた花が地に落ちるような、あの独特の音も。
一瞬の、目を奪うような美しさも。
全てが私を虜にして、その花が枯れたとき、私の中は空っぽになってしまう。
私のその言葉を聞いて、太宰さんはにっこりと微笑んだ。


「そうだねぇ。どんなに美しい花でも、いつかは枯れてしまうものだから。」


ドーン。パラパラ。
今も咲き、枯れ続けている花火を横目に、太宰さんは私と向き合った。
細められた瞳には、今も尚、目を奪うような花弁が映っている。


「もし零時ちゃんが不安なら、私が隠してあげようか。」


「ぇ、」


私は一体、何を言おうとしたのだろう。ただ必死に言葉を紡ごうとして、その全てを、太宰さんに奪われた。


「吃驚したかい?」


抱き締められている、と気が付いたのは、数秒後。からかうような太宰さんの言葉が落てきて、やっと我に返ったのだ。
大きな太宰さんに多い被さられて、何も見えない。
耳元で囁かれて、彼の声以外、何も聞こえない。
さっきまでうるさかった喧騒も、私を不安にさせていた花火の音も、全て背景に変わってしまった。


「か、からかってるんですか」


ぎゅう、と彼の浴衣を握り返せば、ふふ、と笑みが落ちてくる。


「さぁ、どうだろうね」




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花火大会、行きたかったです…

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