恍惚



「何度言ったら分かんだよ。お前が馬鹿だって事は知ってたが、まさかここまでとは思わなかったぜ」

跪く私を見下ろす彼。足を組み直し、ため息をつく。
何度謝ったかもう数えるのはやめたが、ただひたすら謝り続ける。それでも彼の怒りは収まらないらしく、項垂れる私に降りかかる罵詈雑言の数々。
なんだか頭がぼんやりしてきて、どうすれば許してもらえるのか夢現に聞いた。

「キスしろよ」

ゆっくりと顔を上げると、そこには笑顔。普段他人に向ける、優等生のそれだ。
ぞわりと寒気がした。その瞬間、彼は私の頭を思い切り踏み付ける。

「勿論地面にだ。…何想像したんだ?気持ち悪ィな」

今頃はいつも私に向けるような、加虐的で恍惚とした笑顔をしているのだろうなぁと足りない頭でぼんやり考える。
彼の声が遠い。今はただ、夢現に彼の感触だけを感じていたかった。


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大好きな貴女に入れ込む花宮。

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