破壊




「乱歩さん」


涙が止まらない私を見下ろしながら、乱歩さんは帽子を机の上に置いた。
ぼやけて彼の表情は見えない。


「酷い顔だね」


嘲笑にも似た声が落ちてきた。私は愛しいその声を拾い集める。そしてまた、涙を流す。


「私は、壊れてしまったのでしょうか。さっきから、涙が止まらないんです」


「そうかもしれないね。ねぇ、一体誰に壊されてしまったんだい?」


よほど手酷く扱われたんだね、可哀想に、なんて言いながら、私の涙を拭う乱歩さん。
あぁ、知ってるくせに。
あはは、と、自然と笑いが零れる。


「可哀想にね、すっかり壊されちゃって。相手が子供だったら新しい玩具を買い替える所だけど、僕は大人だから違うよ。壊れても、遊んであげる。よかったね。」


あぁほら、だからもうそんなに泣かなくていいのに。
私を壊して部品を何処か遠い所に放り投げた張本人は、目の前で確かに笑っていた。
ぼやけて見にくいにも関わらず、表情が認識出来る程度の距離で、彼は確かに笑っていた。


「あぁ、君を壊してぐちゃぐちゃにしたのが、全部僕だったらいいのに。君は僕のせいで、一人で生きて行けなくなってしまえばいいのに。
ねぇ、きみをそんなにも泣かせて、ぐちゃぐちゃに壊したのは誰?」


クツリと笑った彼は、私の目をじっと見た。きらりと鋭いその視線、探偵はきっとその質問の答えを知っている。


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ちょっと病んでる乱歩さん。
アニメ化記念に文ストのシリーズ書きたいなぁ(言うだけタダ)

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