狡い者同士





「また、またふられた、すき、だ、ったの、に」


ぐすん、と鼻を啜れば、滑らかな肌触りのハンカチで、涙を拭われる。
いつも彼に話を聞いてもらっている。
氷室辰也。
学園王子と名高い、帰国子女。
配慮を忘れないイケメンだ。
私も幾度となくフられ、幾度となく彼に泣き付いている。
彼もまぁ、よく私なんて相手にしてくれるものだ。


「…困ったな、そんなに弱いところばかり見せられてしまっては。
男は狡い生き物だからね、弱いところに、付け込みたくなってしまうよ?」


意地悪な声色だ。
だけれども彼に、狡いのは私だよ、と、付け込んで欲しいって言ったら怒る?と言った。
彼は困ったような顔で、私を抱き締めた。
やっぱり、狡い。

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実はここまでが室ちんの計算だったりしたら恐いよねっていう怪談。

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