嫉妬する彼の台詞 | ナノ





「えーっ、かっこいいじゃん!」


「そっちもいいけど……俺はこっち派だな」


「えぇっ、そっち!?
正反対じゃんかぁ…」


只今私は、友人の佳典と共にアニメキャラ談議中。
元々佳典はアニメ等見ないらしいけれど、私が薦めた物は見てくれたらしく。
嬉しい事にハマってくれた。
…だが……


「何でそっちかなぁ!?」


「こっちのがかっこいいからだろ」


好きなキャラクターの趣味が合わないので、談議は白熱。
私たちが立ち上がり話し始めたとき、私の後ろから声がした。


「えらい楽しそうな話しとるやん。

ワシも入れてくれへん?」


振り向けば、胡散臭い関西弁の黒髪眼鏡……今吉翔一の姿。
相変わらずのニヤニヤ顔で、私を見ている。
こんな人を好きになった私は、相当な変わり者だと思い知らされる。

……そうそう、言い忘れていたけれど。
私と翔一は、数か月前から付き合い始めている。
告白は私から、だったのだが……後から聞いた話では、翔一が裏で操っていたとかなんとか…
…まぁ、今となってはどうでもいい話だ。
私は今、彼の事が好きなのだから。

だが、今はそんな事関係ない。
彼が私の彼氏だろうと何だろうと、佳典との推しメン談議は邪魔させない!

そんな事を思っていると、佳典は翔一の質問に答え始めた。


「ん?あぁ….…零時が教えてくれたアニメのキャラクターについてだな…」


「翔一には関係ないでしょ!

今忙しいの、また後でっ」


佳典の言葉に被せて、私は言う。
少し言い過ぎたかも知れないけれど、今は推しメン談議が先だ。
私の推しメンを好きになって貰うまで帰さないぞ、佳典っ!


「ふーん、それは残念やわぁ…

……まぁ、しゃあないな、ワシもう行くわ」


翔一は意外にもあっさりその場を立ち去った。
私は黙って背中を見詰める。
そして暫くの沈黙の後、私はアニメの話をしようと佳典に呼び掛ける。
すると佳典は、苦笑いをして言った。


「…さっきの言い方はまずいだろ。

追い掛けなくていいのか?」


「え、なんで?」


思ったことを口にすると、佳典は苦笑いを貼り付ける。
そして困ったように頭を掻いた。


「……相当キレてたぞ、今吉。」


その言葉を聞いて、思い出す。
思い返す。
私が翔一に何を言ったのか、翔一が去り際にどんな表情をしていたのか。


「翔一、」


気付いたら、走り出していた。

まだ間に合う。

そう思って走っていると、翔一の背中を発見。
直様駆け寄った。


「翔一!」


私が呼び掛けても、翔一は歩き続ける。
何度呼んでも、振り向いてすらくれない。
まるで聞こえていないかのように、翔一は歩き続ける。


「ねぇ、翔一!
止まって、おねがい!」



私が懇願すれば、翔一はピタリと足を止めてくれた。
棒立ちしたまま、彼は此方を見ようとしない。
私も何も言わず、彼の背中を見詰めていた。

そして少しして、彼は言ったのだ。









どうせワシには

関係ないんやろ。











(翔一、機嫌直してよ…)

(零時からキスしてくれたら、
考えへんこともないで)



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