拍手のやつ。




「え?静雄が?」


目の前の少女の焦りように最初こそ驚いていた新羅だが、持ち前の順応能力で直ぐさま状況を察したようだった。
全貌が見えた時あまりに滑稽に感じて、くすくすと笑い出す始末だ。


「笑わないでよ、新羅さん!
だってしずちゃんが年上好きなんだとしたら、あたし勝てっこないもん…」


少女は、恋人である平和島静雄が年上好きだという事を某情報屋から聞いたようだった。
平和島静雄より歳下である自分は、本当に彼から愛されているのだろうか、と心配になったらしい。
あまりに単純に思えて、新羅はまたも笑い出した。
そんな事が心配で僕に相談しに来たんだ、と目の前の少女の単純さに笑いが込み上げる。


「あのねぇ、静雄が今一番好きなのは、きみなんだよ?」


口元に手をやって、にやける口を隠す。
目の前の少女は、それでも不服そうだ。


「…でも、それはほんの気の迷いかもしれないよ。
もしかしたら全部嘘かも」


自分で言っておいて心に刺さるようで、少女は目を潤ませた。
新羅は少女があまりにもいたたまれなくなり、優しく頭を撫でてやる。


「きみは知らないだろうけどね、静雄の奴何度もここに相談に来てるんだよ。
僕が他言しないのをいい事に、半分惚気とも取れる恋愛相談を延々と…それに、片想い歴はきみより長いみたいだ。
大分前から君のことが可愛くて仕方なかったみたいだよ」


静雄の奴、きみを傷付けないようにってさぞ神経磨り減らしてたみたいだし。
きみが同年代の男の子を好きになったらどうしようって、彼奴らしくもなくうじうじ悩んでたよ。

あれは滑稽だったなぁ、なんて笑いながら、新羅は少女に笑いかける。


「…どう、少しは安心した?」


涙目ながら少女はこくりと頷く。
その姿を見て、新羅は少し微笑ましく思った。


「それなら、会いに行ってくれば良いよ、静雄に。
僕が今から連絡取ってあげる」


またも、ぽん、と頭に置かれた手から、ぽかぽかとした暖かさが伝わってくる。
幸せそうに、少女は微笑むのであった。



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この後目を腫らして来た貴女を見て新羅が貴女を泣かせたと勘違いしたしずちゃんが、新羅を全力で殴りに行きます。笑

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