拍手のやつ。




瀬戸は狡いよ、彼奴頭良いから。

私が唐突に言うと、何それ、と目の前の友人は笑った。
別に瀬戸の才能を妬んでいる訳ではない。
それは勿論羨ましいとは思うが…またそれは別の話だ。
私が黙りこくると、友人は理由を聞いて来た。


「瀬戸とはね、喧嘩した事ないんだ」


別に一緒にいた時間が特別長いわけではない。けれど、短い訳でもないのだ。
瀬戸と同じくらいの時間を共に過ごした花宮とは、数え切れないほど喧嘩した。


「別に、瀬戸が特別私に気を使ってくれた訳じゃないの。
ただね、瀬戸は私の話を聞いてくれるんだよ」


それだけ。
彼はどんな話であったって、私の話を最後まで聞いてくれた。
時たま相槌を打って、聞いてくれた。


「私が瀬戸に怒った時もあったよ。
でもね、喧嘩にはならなかった。
どうしてだか分かる?」


友人は首を振る。


「瀬戸がね、謝ってくれたの。
そうか、ごめん、って。
花宮みたいに逆ギレしてくれれば喧嘩にでもなるだろうに、瀬戸があんまり優しく笑うから申し訳なくなっちゃって。
つい笑っちゃった」


私が言うと、友人は首を傾げた。
瀬戸くんってそんなキャラだっけ?なんて。
私が言い返そうとしたら、後ろから頭を撫でられた。


「何の話してたのお二人さん、俺の話?」


どうせ言わずとも瀬戸にはお見通しだ。
だって、此奴は頭がいいから。





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