07

「さて、今日からお前たちも下忍になった!お前たちの目指すものを聞いてみたいぞ…うむ!」

憧れの人に輝くような笑顔でそう聞かれれば、答えない訳にはいかない。
幾分か冷静さを取り戻したネジの吐き捨てるような「答えたくない…」という呟きにフム、と頷いたガイは、続いたテンテンの「伝説のくのいちツナデ様のように強い忍者になりたい」という言葉に今度は満足そうにフンフンと頷いた。

「フムフム…君はどうだ?」

リイはつい、と向けられたガイの視線に、それまでじっとガイを見つめていた視線を外して顔を真っ赤にさせた。もじもじと人差し指を絡ませるその姿はまさしく恋する乙女といった所か。稀代の美少女と名高いリイのそんな様子に、テンテンとネジは見ているだけで思わず気恥ずかしい気持ちになってしまった。

「わ、私は…忍術や幻術が使えなくても、立派な忍者になれる事を証明したいです…!」

確か『ロック・リー』は漫画の中でそういうセリフを言っていた筈だ。それに、リイにとってその目標は、あながち外れたものではなかった。
あの時、自分を救ってくれた憧れの人、ガイの為に、忍術や幻術を使えなくても立派な忍者になれる事を証明して、その力になりたい。
恥らいながらも確固とした意思を込めたその言葉に、ガイは口角を上げるとウム、と一つ頷いた。

「フ、フン、お前、忍術も幻術も使えない時点で忍者じゃないだろう。ボケてるのか?」

飛び出たネジの言葉に、リイはぴくりと反応すると、すうっと温度の無くなった視線をネジへと向けた。
濃いまつげに縁どられ、まるで黒曜石のような輝きを放つ瞳の美少女にそんな目で見られれば、流石のネジも動揺する。アカデミー時代、近寄りがたい雰囲気を醸し出しながらも、にこやかな笑みを絶やさなかったリイ。人を寄せ付けない力のある微笑みこそ何度か見かけたことはあったが、ここまで凍てついたリイの目を見たことがあっただろうか。いや、ない。ネジは思わず息を飲んだ。
こいつ…空気読めよぶっ飛ばすぞ。というオーラがリイの全身から迸っている。

ヤバイなんか俺マズいこと言ったっぽい。

しかしここで、頬を痙攣させたネジに救いの神が舞い降りた。

「いや、そんなことはない!“熱血”さえあればそうとも限らないぞ!」

まさしく鶴の一声。ガイのその一言に、リイの全身から迸っていたオーラが一瞬にして霧散した。
重苦しい重圧から解放されて、テンテンは思わず全身に走らせていた緊張を解き、長い溜息をつく。

「フフ…良きライバルと青春し、競い合い高め合えば、きっと立派な忍者になれるさ!!…努力は必要だけどな!!」

しゅびっとナイスガイポーズを決めたガイに、リイは瞳を輝かせて頬を上気させながら「その通りですね先生!ウフフ私頑張ります」と両手を頬の横に宛てた。美少女がやるとそんな姿も様になるものだから恐ろしいものである。

「良きライバル、…フフ」

キロッとネジへと視線を向けるリイ。ネジは背筋を走り抜けた悪寒に、どうやらこのチームは一筋縄では行かなそうだ、と冷や汗を流した。







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