06

何故か自分にとてつもなく都合のいい「体術による組手」という卒業試験を無事通過したリイは、もらった額あてを首に掛けながら、担当の上忍が集合場所のアカデミーの屋上に現れるのを同伴になったテンテン、ネジの二人とともに待っていた。
各々の傾向、実力を加味して編成されたスリーマンセルは、忍術・体術に優れたネジと、忍具の扱いに長けるテンテン、そして座学でトップの成績をとったリイという三人から構成されており、それぞれにはこれまであまり接点はなかったものの、チームのバランス的にも、この班分けに不満はない…とリイは横の二人へと視線を動かした。
何を考えているのか、視線を一点に向けたまま無表情を貫くネジと、リイとネジの事が気になるのかちらちらと視線を動かすテンテン。ぱちり、と視線が絡み合って、リイは首を小さく傾けながらテンテンに微笑みかけた。

その時だった。

三人の前に気配もなく、唐突にのっそりと現れた大きな亀。
一体何だ、と三人が反応する前に、その亀が口を開いた。

「お前たちが、今期から俺が担当する下忍かァ!」

「かっ、亀がしゃべっ…!?」

驚いて思わず白目を向きながら亀を指差すテンテンに、若干後ずさったネジ。しかしその二人の反応とは裏腹に、リイは輝くような笑みを浮かべてその亀を見つめていた。聞き覚えのある、忘れようもないこの声。
実はリイは、何よりもこの瞬間を心待ちにしていた。『NARUTO』を読んでいたからこそ知っているこの展開。己の師となるべき人が、師となるこの瞬間。

キラン、と亀の瞳が光った。と同時に、ボン、と甲羅から人の大きさくらいの煙が弾ける。



「よう!青春してるかー!?お前らーっ!!」



テンテンとネジは、口をあんぐりと明け、白目を向きながらそのあまりの衝撃に固まった。
緑色の全身タイツにオカッパ頭、濃い眉毛。白い歯を輝かせる笑顔とポーズは、初めて見る人間にとってなかなかの衝撃を受ける代物だろう。リイの横の二人と同じように。

まあ、ちょっと濃い事は否定しない。しかしその人は、リイにとっての憧れであり、あの日からずっと夢見てきた背中の持ち主なのだ。

「今日からお前らを担当することになった上忍のマイト・ガイだ!よろしくな!!」

「ハイ、よろしくお願いしますっ!」

ネジとテンテンの顔から血の気が無くなった。
ガイのあまりのキャラの濃さに硬直していたところを、金槌で殴られたかのような衝撃。

あの、あのロック・リイが、目をキラキラさせて満面の笑みを浮かべているだと…!?

リイといえば、アカデミーでは常に冷静沈着、他人を殆ど寄せ付けない一匹狼主義者で、その美少女っぷりと相まって高嶺の花とされていた存在だった。そのリイが、あんなに目を輝かせて、この衝撃的に濃い男に熱い視線を向けている。

これは一体どういう事で一体どう言う光景だ。

あまりの事に理解が追いつかなくなったテンテンとネジは、思わず頭を抱えた。







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