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無事に天地の巻物を開き、口寄せされた中忍から二次試験合格を言い渡されたリイ達は、合格した受験生達と共に火影の前に並んでいた。
総勢二十一名の合格者。七チーム中五チーム、十五名が木ノ葉の忍。残りは砂と音が一チームずつ…。リイは左右に目を動かし、メンバーを確認して小さくため息をついた(ちなみに音のチームからはとてつもない殺気の籠った視線を向けられていたが、リイはそれを総スルーした)。
記憶の中にある中忍選抜試験のメンバーと寸分違わない顔ぶれ。まったく、笑えないくらい物語は順調に進んでいるようだ。

リイは顔を上げて目前に立つ火影、そしてその後ろに控える各里の上・中忍達を見た。
流石に主催国だけあって、木ノ葉の忍が多い。火影の右斜め後ろに視線を動かしたリイは、そこでぴたりと動きを止めた。

(ガイ先生…!)

険しかったリイの顔が一変、輝くような笑顔に変わる。
この先の事を考えて若干憂鬱になっていたが、そんな気分も憧れの人を前にすれば一瞬で吹き飛ぶというものだ。

(やはり先生方の中でガイ先生が一番輝いています…!)

キラキラとした瞳で己を見つめる視線に気が付いたのか、ガイはリイの方を見るとにこりと笑い、ぐっと親指を立てた。白い歯がきらりと光る。

「はうっ…!」

爽やかな笑顔に胸を射抜かれ、リイは額に手を当てながらふらりと倒れかけた。
後ろに居たテンテンはそんなリイを慌てて支え、「ちょっとリイしっかりしなさいよ!」と小声で注意をするが、恋する乙女モードに入ったリイはそんなことなどお構いなしにガイの笑顔に身悶える。
突然倒れかけた美少女に周囲の心配そうな視線が集まるが、ネジとテンテンの反応は慣れたもので、ネジはいつもの事と振り向きさえしなかった(ただ、「またか」と呆れてはいた)。

(くっそはたけカカシ場所代われ羨ましい…!!)

ガイの隣に立ち、何か雑談をするカカシの姿に、リイの嫉妬の視線が突き刺さる。
殺気の籠ったそれに、カカシの背に悪寒が走った。

「ちょっとガイ何なのあの子物凄いこっち見てるんだけど。怖いんだけど」

「しかしお前のチームもなかなかやるなカカシ…運が良かったかな」

「無視かよ」

カカシの訴えをさらりと無視したガイは、ちらりとリイ達の隣に並んだナルト達の班を見ると、不敵に笑う。

「次の関門では実力が物を言うからな。まあ青春とは時に甘酸っぱく時に厳しいものだよカカシ」

「いやそんなことよりあの子の…」

「まあ、オレのチームがいる限り、これ以上はムリだな」

「人の話聞けよ」


カカシはガイにツッコミを入れる事を諦めた。
リイもガイも、人の話を聞かずに突っ走るところは師弟揃ってそっくりである。



*



同盟国間の戦争の縮図として行われる第三次試験。
国の威信をかけ、各国の忍が命懸けで行うその戦いの予選が始まった。

皆の注目する中行われた第一試合目、うちはサスケVS赤胴ヨロイの試合を、肩に乗せたリスと戯れながらほぼスルーしたリイは、サスケが試合の最後に放った技、獅子連弾をちらりと見、その動きが試験が始まる前にリイがサスケに対して放ったそれと同じものであることに動揺するガイを見て少しだけ表情を曇らせた。
一度見ただけの技を完全にコピーし、再現してみせるとは、流石にNo.1ルーキー、天才と言われるだけはある。

(ガイ先生にこんな顔をさせるだなんて…)

幼いころに天才と言われたカカシと、今のサスケの姿を重ね合わせているのであろうガイに、リイはなんとも言えない気持ちになった。
ガイにはかつて落ちこぼれと言われた過去がある。努力を重ねて体術を極め、天才忍者であるカカシと肩を並べる忍になったガイだからこそ、才ある忍、カカシやサスケのようなタイプの忍には思う所があるのだろう。

(…だからこそ、私は負けるわけにはいかない。ガイ先生、あなたの為に、私は努力が天才に勝ると証明する。必ず証明して見せる)

くすぐる指を止めたリイを見上げ、リスは不思議そうに首をかしげる。
眉根を寄せて会場を睨み付けるリイの瞳には、確固とした意志が宿っていた。

自分の知っている通りに時間が流れる今、たとえ、この先の試合で自分が負ける事が決まっているのだとしても。

それでも、足掻いて見せる。必ずガイの期待に応え、その忍道を証明して見せる。
その為に、今日まで血の滲むような努力をしてきたのだから。


(見ていて下さい、ガイ先生…!)


リイはガイの後ろで、そっと両の拳を握りしめた。







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テーマ「人外ファンタジー」
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