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―――懐かしい、夢を見た。





暗闇の中で、小さな子供が一人、泣いている。

子供たちの笑い声。ブランコの鎖が揺れて軋む音。砂場を駆け回る忙しない足音…。
ふと、顔を上げれば、そこは桜が咲き乱れる、近所の公園だった。

薄桃色の花びらが風に舞う中、楽しそうな表情を浮かべて遊び回る子供たちを遠目に眺めながら、一人、行き場を失ったように赤いランドセルの肩紐を握り締めながら佇む女の子。
ランドセルにつけられた黒い猫のマスコットが、風に吹かれて寂しげに揺れる。

(…ああ、あれは、私だ)

確か、転校してきたばかりで、まだ友達が一人も居なかった頃の。

楽しげな皆が羨ましくて、けれど引っ込み思案で人一倍人見知りだった当時の自分は、あの輪の中に自分から入っていく事ができなかった。
うつむいて、靴のつま先を見つめる。小石を蹴飛ばすその足元に、コロコロと転がるボール。


『ねえ』


一陣の風が吹き抜けて、薄桃色が視界を染める。
振り返った先に、三人の少女。




『一緒にあそぼう?』




―――それが、すべての始まりだった。








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