夕飯を食べ、片付けも終わった。別段することもない。長年恋人同士っていう間柄のディーノはソファでゆったりとテレビを眺めている。イタリアにいるディーノと会うのは久しぶり。なんたって私は日本に暮らしているから。ディーノは一言もイタリアに来いとは言わないから、私も行きたいなんて言わない。


「はい、ディーノ」

「お、サンキュー」


ディーノに暖かいコーヒーのカップを渡して隣に腰かけた。ディーノはそれを一口すするとほっと息をついた。久しぶりに会ったからといって、特別なことをするわけでもなく(付き合いたてのころは何かとベタベタしてたっけかな)、ただ2人でテレビを眺めるだけ。私は途中からディーノの右腕に背中を預けて、そこらへんにあった雑誌を読み始める。ディーノはそれを気にする様子もない。ズズっとコーヒーをすする音がする。カップから口を離すとディーノが何か言おうとこちらを少し向いたのが視界に入った。


「なぁ、」

「んーなにー?」

「結婚するか」

「あーうん?」


今、なんて言った。結婚するかって言った。結婚って、結婚だよね。え、結婚っ!?なにメシ行くかみたいなノリでさらっと言っちゃってくれてるのかしら。いや、ていうかさっきのって、


「本気…?」

「あたりめーだろ」

「だって、結婚だよ!?ディーノが私の旦那さんになって、私がディーノのお嫁さんにっ、そんでもってずっと一緒にいるんだよ!?」

「おう、そうだな」


ディーノの優しい笑顔にたしなめられた私の勢いはたちまちしゅんとなった。ディーノはコーヒーを置いて私を抱きしめた。


「姫は嫌なのか?」

「そんな、」

「オレは姫とこれからも一生一緒にいたい。…イタリアで暮らそう」


ディーノの言葉に柄にもなく顔が火照る。そして、心臓のドキドキが止まらない。ディーノは身体を少し離した。


「オレと結婚してくれ」

「うんっ…」


ディーノは泣き始めた私の左の薬指にきらきら光る指輪をはめてくれた。




これからの約束
(隣で笑うのは一生君がいい)




ゆい様相互感謝!
091028

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