相変わらずの紙の山に埋もれていると、ドアからひょっこり顔を覗かせたのは姫。紙の山から身体を起こした。どうしたの、と僕は聞いた。
「ラビ探してるの」
おずおずと入ってきた少女の手には分厚い本が大切そうに抱かれていた。その本は確かラビのもの。借り物を返しにラビを探しているのか。
「コムイさん、知らない?」
「ごめんね、今日はまだ会ってないんだ」
「そっか、ありがとう」
そう言ってぺこりと頭をさげて部屋を出ていった。僕は頬杖をついて見送った。さあ、さて仕事でもするかと紙の山に手を伸ばした。そしたら今度はラビがやってきた。
「悪いコムイ、姫どこか知らないか?」
「どうしたんだい」
「いや、忘れ物届けに」
ラビは可愛らしいネックレスを取り出した。ああ、確かに姫が着けていたネックレス。誰に貰ったのって聞いたら、秘密って少し赤くなって笑った姫を思い出した。
「ちゃんとつけとけって言ったのに…」
「なにか言ったかい?」
「なんでもないさ、姫探すから行くな」
ラビは早足で部屋を出ていってしまった。姫が探していたことを伝えるのを忘れてしまった。だけども、探しあっているから大丈夫かな。なんて思ったのは間違いだった。
「コムイさーんっ」
ラビが見つからないの、とまたやってきた姫。さっき出て行ったよ。って教えたら急いで出て行く姫。その数分後にやってきたのはラビ。姫いないよな、と言う彼にさっき出て行ったよ。と言った。ラビは嬉しそうに部屋を飛び出した。これを数時間のうちに繰り返すこと十数回。
「あたしラビにもう会えないんじゃないかな」
泣き出しそうな姫の頭をぽんぽんと撫でたら、姫はありがとうございますって笑って頭を下げた。そして、十何回目かのラビ捜索のために部屋を出ようとするとひとりでにドアが開いた。
「コム…姫っ!」
「ラビっ!」
やっと会えたと言って、姫はラビに飛びついた。ラビは愛おしそうに抱きしめた。
立会人K
(早く逢いたくてじっとなんかしてられない)
090922