どうしよう。どうしよう。心臓飛び出るくらいバクバクしてるよ。鏡に映る自分はいつもの真っ黒な服を脱ぎ捨て、女の子らしいワンピースを着て、いつも結んでる髪も下ろしたついでに緩くまいてて、ルッス姐さんに綺麗にメイクまでしてもらってる。


「へへ変じゃないですか?」

「変なわけないでしょ!なんならアタシがデートしたいくらいよ」

「デートだなんて!」

「あら、違うの?」

「…違わないです」


幹部と平隊員が奇跡的に付き合って早半年。これが初めてのデート。失敗したくないからルッス姐さんに協力してもらった。まではよかったが、プライベートで2人で出かけると考えたら緊張で心臓が破裂しそうなわけでして。


「んもう、そんな緊張してたら可愛い顔が台無しじゃない」

「でも、でも、」

「ほら、早く行かないと短気な彼がしびれきらしちゃうわよ」

「わかってるけど、」

「早くいきなさい」


ルッス姐さんに背中をとんと押されて、踏みとどまっていた一歩を強制的に踏まされた。目の前のドアを開ける前にルッス姐さんを見ると笑顔で手を振っている。

「行ってきま、」

すと言うところでドアが盛大に開かれた。ついで怒号が轟く。


「ゔぉ゙ぉ゙い゙!遅ぇぞぉ!」

「女の子のオシャレには時間がかかるのよ、スクアーロ」


私の彼氏、もといスクアーロが私を見るとぐいっと手を引っ張っていく。始めは早かった歩調も次第にゆっくりになって、手を引かれて歩くかたちになる。手を握られてるだけで心臓がバクバクしてる。そのときスクアーロの歩く足がピタリと止まった。私は銀色の髪をドキドキしながらただ見つめる。


「姫、」

「は、は、はい」

「可愛いじゃねぇかぁ」


そう言って振り返ったあなたの笑顔にまた心臓がひどく反応して、そろそろ死にそうです。







heart
(今日だけはふつうの恋人同士)



090913

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