真夜中、自室の扉を開け、ふらふらと電気もつけずに自身のベッドへと歩いていく。歩きながらスーツの上着を脱ぎ捨てワイシャツのボタンを2つ開けて、ベッドに倒れ込む。
「つ、かれた」
ここ何日か山積みの仕事をほとんど寝ずにこなしていたら、次から次へとまた仕事がやってきて、泣きそうになりながら先ほど全て片付けてきたのだ。途中で獄寺とか六道とか(一応上司だけど)が呼び止めてた気がするけど、そんなの知らない。あんな労働基準法を完全シカトした労働時間にこれ以上わたしの眠りを妨げられてたまるか。もう瞼は持ち上がらない。このまま深い深い眠りにつこう。おやすみなさ、
「姫いるか?」
その声と同時にカチリとついた灯り。眩しくてさらに目をぎゅっとつむる。訪問者なんか目を開かなくてもわかる。何年も連れ添ってるんだから。そいつは、もとい山本武はベッドサイドに座った。
「いるんじゃねぇか」
「んー」
「寝るなら着替えろよな」
「んー」
「獄寺と六道から資料預かってきたぜ」
「いらない。燃やして捨ててきて」
くす、と武が笑うのがわかった。すぐに優しく頭をなでてくれる。それは心地よくて、だんだんと眠くなっていく。だいぶ重くなった瞼を無理矢理もちあげたら、あったかい笑顔の武。武の服の裾をきゅっと握ったら、わたしの考えなんかお見通し。一緒にごろんって横になる。
「お疲れ」
また頭を撫でて前髪にキスを落とした。それだけでわたしは安心して眠りにつけるの。
おやすみ
(この温もりじゃなきゃいや)
090807