日本での任務、最後のアクマを破壊し無事に任務を終えた。
「お疲れさま、アレン」
後ろからかけられた声に反応して振り返れば姫がいた。
「お疲れさま」
そう言えば姫はにっこり笑った。この笑顔で任務の疲れも癒される気がした。ぬるい春風が吹き抜けるのも気持ちがよかった。すると、視界に白いものがひらひらと落ちていった。
「雪…?」
そんなばかな。僕の一言を聞いていた姫がクスクスと笑った。
「桜、だよ」
「さくら?」
「うん、ほらあれ」
姫が指差す先には立派な大木があった。木の先には薄ピンク色した花と緑の葉が共存していた。
「もう散ってきちゃったのかぁ」
姫は残念そうに呟いた。花びらは風に吹かれるとひらひらと舞い落ちる。それは切なくて、綺麗だった。
「桜はね春にしか咲かないの。満開になるとすっごく綺麗なんだよ」
楽しそうに話す姫を見ていると、その満開の桜が見てみたくなった。
「姫、」
「ん?」
「来年の春にまたここに来ませんか?」
びっくりした顔はだんだんと嬉しさに満ちた笑顔に変わっていく。
「うんっ」
約束だよ、そう言って小指と小指を絡める。桜の花びらがまた舞い落ちた。
春の雪
(来年は満開の桜を君と見に行こう)