(ね、記念日っていつなの?)


昼休みにお昼を一緒に食べていた友人からの一言。私はその質問に答えられずに、チャイムが休み時間の終わりを告げた。そして、その言葉が私を悩ませた。雲雀恭弥。我が並盛中の風紀委員長にして最強の男。そして、女子からの人気はもちろん絶大なわけで、私が風紀委員じゃなかったら程遠い存在で話すことなんてなかっただろうな。 一応、その彼とは恋人同士という間柄。でも、果たしてそうだろうか。委員会でよく一緒にいて、それなりに話もして、たまに一緒に帰って…キスも一度だけ。 だけど、肝心の"好き"っていう言葉は聞いたことない。だから、記念日とか言われても困る。それでも、私は付き合ってるって思って、る。
そこで本日最後の授業終了のチャイムがなって、私は委員会のために応接室に向かう。雲雀さんのの性格上、恋愛事に"遊び"なんて言葉はないだろう。恋人ができれば一途そうだし。言うならば一人の人をしっかり大事にするタイプかな、そもそも不器用な人だもん。これは絶対正しい。応接室前まで来ると扉が少し開いていた。必然的に中の様子が見えるわけで、中には勿論雲雀さんがいる。でも、そのすぐ隣には知らない女の子。


「やだー恭弥てばっ!」

「ワォ、君が言える立場かい?」


そう言って雲雀さんはその子の頭を優しく撫でた。私はその場から走って逃げた。
私の知らない女の子は可愛い声で雲雀さんの名前を呼んだ。雲雀さんに触れてもらってた。雲雀さんは、笑ってた。私が知らない雲雀さんがいた。ああ、やっぱり付き合ってなんかなかったんだ。ただの私の思い込みだったんだ。ひどい妄想もあったもんだ。考えてみたら、一緒にいたのは委員会だから、話だって仕事の話しか雲雀さんは返してくれなかった、いつも私の一方通行で話してたな、帰りだって無理矢理私が一緒に帰ったも同然だ。でも、キスは、一度だけのキスは、雲雀さんからだった。あれはなんだったんだろう。一度の過ちだろか。そういえば、あれ以外に雲雀さんは私には触れてはない。やっぱり、ただの気の迷いだ。


「私、バカだ…」


そのキスにすがって付き合ってる気分だったなんて、バカとしか言いようがない。目からは涙が出てきてどうしようもなくて、急いで屋上に駆け込んだ。屋上は幸い誰もいない。それでも隅っこで丸くなって泣いた。私はただ雲雀さんを追いかけてただけなんだ。雲雀さんの気まぐれに翻弄されただけだ。好きなのは自分だけだった。そうだ、前向きに考えて今日気づけてよかったってことにしよう。なら、友達に付き合ってなかったって言わなくちゃ。そう思って携帯を開いたら、雲雀さんからの着信。でなきゃ、そう頭ではわかっても通話ボタンが押せない。数秒したらぷつりと切れた。どっか寂しいようで、安心してた。携帯を見たら雲雀さんからの着信はもう2件。留守電に入ってたメッセージは"どこで何してるの。委員会始まってるんだけど"低い声で怒ってた。私は留守電を聞き終わると直ぐにメール画面を開いて、友達宛にメールを作る。内容は"私ね雲雀さんと付き合ってなかった"これでよし。電話で言えないのは口で言うのは辛いから。あとは送信ボタンを押すだけだ。


「僕の電話を無視してメールかい?いい度胸だね、姫」


背中から聞こえたのは、紛れもない雲雀さんの声で。後ろからかつかつと、雲雀さんが近づいてくる。それと同じくして心臓が変なリズムで高鳴る。雲雀さんは私が持っていた携帯を取り上げた。内容が内容なだけに私は急いで携帯を取り返そうとするが、無駄な話。


「なにこれ?」


ごもっともな反応。だって、雲雀さんは私となんか付き合ってない。一番知られたくない人に見られてしまうなんて最悪だ。どうしていいかわかんなくて、ただ雲雀さんを見つめた。


「…姫、泣いてたの」


じり、と雲雀さんが近づけば、私は思わず後ろに退いた。でも、すぐにフェンスに当たって逃げ場を失う。


「僕と付き合ってなかったと思って、泣いてたの?」


雲雀さんの顔が近くて、回らない頭で言葉を理解して頷いた。


「バカだね」


いや、バカとかさっき自分でも痛感しましたから、改めて言わないで下さい。必死に頭で突っ込み入れてたら目尻を舐められた。


「なっ!?」

「僕はもう付き合ってると思ってたよ」

「うそ、だ。だって、さっきの人は…」

「あぁ、見られてたの。ただのろけ話をし合ってただけだよ」


雲雀さんは私の腰に手を回して、抱きしめた。


「キスをした時から付き合ってるつもりだったんだけど、」


「ちゃんと言わなかったから伝わってなかったみたいだね」


雲雀さんの声は私の不安も悩みも全部一気に溶かしていった。初めての抱擁にも戸惑ってる私なんか無視してさらに雲雀さんは耳元で囁く。

「好きだよ、姫」


ああ、欲しかった、ずっと欲しかった言葉を雲雀さんはやっとくれた。さっきまで泣いてたのに、今すごく幸せだって感じてる。


「会話とか弾ませるの苦手だけど、姫が話てるの聞くの好きだよ。」

「ひば、りさん、」


雲雀さんはまた目元を舐めて、キスを落とした。甘くて溶けてしまいそうで、もっと欲くなった。


「姫は僕が好きだよね?」


答えは一つしか用意されてない質問に私は笑って"もちろんです"と答えた。雲雀さんと二度目のキスをした。





スタートライン
(雲雀さん、もっとキスが欲しいです)
(…止まらないよ)


090226

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