そう言われてハイ、そうですかと信用できるわけがない。
玄関に護身用の刀が掛けられていたのを思い出して、すぐさま刃先を向けた。

「寄るな」

できるだけ暗い声で、そう発した。

「お前もあの化け物の一派か?父さんと母さんを殺しておいて…弟まで狙うのか!」

威勢を張ってはいるけど、これでも内心怖くて仕方ない。それを悟られないように必死なわけだ。
こっちの言葉に男は困惑したようで、意味がわからないと言いたげに近づいてきた。

そんな演技にだまされるか。

「寄るなっ!!それ以上近寄ったら斬る!!」

今まで以上の大声で怒鳴り散らせば、また向こうは立ち止まって。

こいつもあの化け物の仲間なのかもしれない。突然現れて両親を殺していったあの化け物の残党かもしれない。
もしそうなら、きっとジャンタも狙って殺すつもりだ。
だけど、そんなことさせない。ジャンタは絶対に守ってみせる。

あのせいで疑心暗鬼に陥ってからは、人の姿さえも信用できなくなった。
そうさせたのはあの化け物どもだ。

「…一歩でも近寄ってみろ、本当に斬るぞ…!」

そもそもあの化け物どもはなにが目的だったんだろう。
こんな何もない貧しい村に、一体なにをむさぼりに来たというのか。
ウチにだって金目のものや食料なんてのはそうそうないっていうのに。

いや、あいつらの目的なんてどうでもいい。
とにかく今は身の安全を第一に考えなければ…


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