あ、チーフだ。いつもいつも通信機から口うるさく命令してくるボスの登場に、場は緊張こそしないものの確かに静まった。
ちゃんと紹介しないとな、と俺は再びキュオとジャンタの方に歩み寄った。
「キュオ、ジャンタ、紹介するよ」
関員の皆も、自分達のボスの登場に少しだけ表情を引き締め、通路を作るように左右に移動する。
その奥から登場したのは、関員と同じように白衣を着たしわくちゃのジジイだ。もうほとんど白髪になってる薄紫の髪は後ろで一つに束ねられてる。
仕事の時に邪魔だかなんだかで、前髪はいつもオールバック状態なんだよな。
「この人がチーフ、ここのトップだ。ちなみに今年で100歳」
「え!?すごっ!!」
キュオが思わず驚きの声を上げたのも仕方ない。
だって100で働いてる人なんてそういないだろうし、何よりもそう見えないからだろう。
たしかに顔はシワだらけシミだらけで、歳相応だ。
でもそんな高齢にもかかわらず、杖も突かず立っていられる。しかも背筋も曲がってない。
それから歯も全部ある、と付け加えればキュオは困惑とも尊敬ともわからないような表情を浮かべた。
まぁつまり、ただのジジイにしちゃ若々しすぎるわけ。
喋り方だってその辺の奴よりも全然はきはきしてるしな。ちょっと短気だけど。
キュオが改めて「始めまして」と頭を下げると、チーフも目を細めたまま頷いた。
「ウーノから話は聞いている。キュオ・キッツィだな?」
「あ、はい……」
「見せたいものがある。ついてきなさい」
チーフの言葉にちょっとだけ戸惑ったらしいキュオは、俺に視線でどうすればいいかと問いかけてくる。
多分、こういう風に上司から何かを言われる事に慣れてないんだろう。だけどこれからはこの人の傘下に入るわけだから素直に応じないと。
俺はニコッと笑ってから歩くチーフの背中を追いかけた。つられたようにキュオも走り出す。
「にーちゃんが行くなら僕も行くぅー!!」
「ジャンタくんは待ってよーねー」
可哀想だけど、ジャンタはちょっとだけお留守番だな。
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