「それを早く言えよ!!」

「言う前にそっちがクッション投げつけてきたんだろ!!」

確かに、最後まで聞かずに乱暴な手に出てしまった。だけどそれはこいつの言い方が悪いのもある。
それに関しての文句は後で言う事にして、今はこの命知らずに何とかしてもらうしかない。
ウーノは自分のポケットに手を突っ込み、何かを探しているようだった。ところが。

「…………あれっ? あれ、あれれ?」

「ど…どうした?」

何か、その声色だと嫌な予感しかしないんだが。
というのもあながち間違ってはいないようで。

「…俺のピース落とした…」

「はぁ!?それが無いと外れ囚人を倒せないんじゃ…」

こんな時にそんな無用心な事があっていいのか。
落としたって、そんなの対処しようがないじゃないか。

色々と騒がしくてすっかり意識の外に外れそうだったけど、ここで真上にある何かが動くのを感じた。

「!!」

今まで動きを止めていた外れ囚人が、さすがに耐えかねたのかまた襲い掛かってきた。
また反射的にジャンタの腕を引き、ウーノはこっちとは反対方向にそれを避ける。

「ナイス反応、キュオちゃん!」

「うるさい!!さっさとピースを探せ!!」

もうこのまま外れ囚人が止まってくれることはない。間違いなく襲われる。
だったら、成す術のないこっちは逃げ回るしかない。
ウーノに全てを託して、ただ生き残れる事を信じて走るしかない。

「今こいつを倒せるのはお前だけなんだろ!?こいつらはどうにか引きつける!さっさと探せっ!!」

「僕たち死んじゃうのぉ!?」

「大丈夫だ!生き残れる!生き残れるから…今は走れっ!!」

幼い弟の手を引いて、ただがむしゃらに走り続けた。


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