ガスマスク集団


―その昔、様々な生物の繁栄を願い、5人の贄をささげる集落があった。
彼らは贄だが殺されることはなかった。「人の手で殺すのは自然の理に反している」と判断されたためである。生きながらの贄、名の通りの生け贄である。
自然に死ぬの待ち、5人全員が死ねばまた次の贄が現れる。その集落はそうして長い間繁栄を保ってきた。
しかし、贄は集落の繁栄を裏付ける存在でありながら、集落の人間は彼らを忌み嫌った。
いつしか贄たちは人間としての権利を失い、迫害を受けた。金銭も住処も持たぬ贄は常に居場所を転々とし、獣や虫たちと同じ生活を送っていた。
「人は人、獣は獣、贄は贄。」いつしかそんな価値観が集落を覆い、彼らは人ではなく「贄」という不完全な存在、異次元の存在としてみなされた。
それからというもの、贄には必ずガスマスクがつけられた。それは人と贄とを区別する手段であった。
だがそれ以上に、「人と同じ空気を吸うな、贄の汚らわしい息を空気に混じらせるな」という差別の具象化であった。
理不尽な掟で人と完全に縁を切られた贄たちは、今日も生きるために広い集落の中を彷徨い歩く。―

…っていう背景で自由を勝ち取るために戦う贄の話を描きたい。






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