私の人生が変わった日 1/2 


Side:Yamanami

 私たち新入生を歓迎するような桜満開の通学路をこれからの学校生活に対する期待とちょっぴりの不安を抱えて歩く。
 私の進学先は誠凛高校という昨年できたばかりの新設校だ。
 中学の友達はみんな公立高校に進学していて、私がこの学校に決めたとき「新設校の私立なんて将来性ないのによく選んだね〜。進学とか大丈夫?」と散々心配されたものだ。
 私は昔から某演劇学校のような風習が苦手で、新しいことや興味のあるものに全力で取り組みたいと思っていたのだ。この学校は目新しい部活動も沢山あるし、自分がやりたいと思えば部活動を設立することだってできる。自分の人生を自分で進んでる感があって、『生きてる!』って思う……はずだ多分。
 校門から続くフライヤーの嵐……読書部なんてのもあるんだ……!
 そんな部活動勧誘や新入生の流れにゆらゆら流されながら進んだ時点ですでに疲れていた。クラスはC組らしい。早く行って座りたい。


◆ ◇ ◆



 クラスの扉を開け、席を確認する。
 そして振り向いた瞬間、目に入る男の子。
 すべすべの肌、ぷるぷるの唇、繊細なガラスのような瞳、控えめな眼鏡も彼の尊さを表現しているようで「ウッ」と意味のわからない声がした。決して私の口からではないことを祈る。
 運命の彼とのファーストコンタクトで失敗は許されない。変な女とでも思われてみろ、私は今すぐ生まれ変わりたくなる。
 そして片方だけ伸ばされた髪の毛。中学生の頃、陽キャの女子が顔の横の髪を伸ばしてたら『ケッさっさと先生に切られろ』って気分になったけどこれは違う。これは別格だ、この尊い髪は全人類から守らねばならない。そう天命を受けた気がした。これが運命……?
 バッと振り返り彼の名前を確認する。『色無雫』尊い。美しさの詰まった文字列……これは神か?????


◆ ◇ ◆



 入学式も終わり、新年度恒例の委員会決め。
 正直私はひっそりと生きていきたいので、生き物係あたりでいいと思っている。
 あー早く委員会誰かならないかなぁ……と思っていたら、学級委員に色無君が指名されていた。そして流れるように司会が担任から色無君に代わる。えっ眼球潰れるマジか。
 そして教室に響き渡る彼の声。男の子特有の少し低めの声。学ランで少し隠れた喉仏が男らしい尊い好き。録音して毎日聞きたい。鼓膜もう少し買ってくればよかったなぁ、溶けちゃう。
 ちょっとスマホいじって録音した。大丈夫、バレなければ犯罪ではないのだ。


◆ ◇ ◆



 移動教室でクラスメイトを置いていく色無君を見た。色無君ってば結構ドライ……? でもそんな色無君も素敵……ののしられたい。
 うっかり家で『色無君ののしって』といううちわを作ってしまった。私のイマジナリー色無君は「ののしるなんてそんな……」と言っていた。
 私は色無君がいつYouTubeデビューしてもいいようにケーキ屋でバイトを始めた。バイト代は色無君へのボイスレコーダーや一眼レフに使おうと思う。


(P.50)



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