見えるモノなら信じたい

大切が、弾けて消える夢を見た。
夢だとわかってても、胸がつぶれるような気持ちになって琥太郎はベッドから身を起こす。
窓から見える校庭には沢山の人間がいて、喧しく何やら騒いでるし、ドアの向こうの廊下ではドタバタ誰かが走ってる。
そんな中でぽつんとひとりぼっち、まあいつも通りな保健室。

な、はずなんだけど。

ぐしゃりとつぶれた感覚はいかんともし難い不快さで、どうにもさみしくて仕方がない。
こんな時にはアイツが居てくれたらなあ、なんて琥太郎は思うけれども、まあそんなにうまくはいかないわけで。
せめて不快な胸の内をなんとかしようと、いつもの通り昼寝を決め込むことにした。



ちくり、と針でも刺さったみたいな痛みを首筋に感じて、琥太郎は目を開ける。

「……………夜久?」
「あ………っ!」

顔を真っ赤にした月子が逃げようとするのを腕をひっつかんで止めて、ベッドに引きずり込む。
しかたがない。
逃げるのが悪いんだと琥太郎は誰にでもなく言い訳してやる。
逃げるから。
そうやって逃げるから。

こんなことをしておいて。

にやりと唇を吊り上げて、腕の中に閉じ込めて、真っ赤になってぷるぷると震える月子をじぃっと見つめる琥太郎の、いつもはストールで隠れた首筋に。

紅い痕、ひとつ。

「いけない奴だな、お前は」
「あの、その、せんせい…………」
「こんなに可愛いことして」
「……す、みません。あの、退いてくださらないと起き上がれな……」
「別にいいだろう?」

年頃の少女を守るようにしっかりと着込まれた制服を、少しずつ崩していく。
まずはしゅるりとスカーフから、そしてブラウス。
開かれたそこには白い首筋があって、思わず舌なめずりでもしそうになった琥太郎だけれども、ぎゅぅっと目を閉じてぷるぷるぷるぷる震えてる月子を見てそこは自重しておく。
だけど、その首筋にちぅっと強く吸い付くのは自重しない。

「…………ひ、ぃ」
「ん……………」

小さく鳴いた月子に満足げな顔して唇を離した琥太郎は、そのまま月子を抱き込んで目を閉じた。

「せ、せんせい……?」
「お仕置きだ、このまま抱き枕になっててくれ……寝る」
「ええええ! ちょっ……まっ………」
「……………」
「早い!」





やっぱり、大切が弾けて消える夢を見た。
琥太郎はやっぱりつぶれそうなくらいに辛くなって、抱き込んだままの月子を確認する。

「………月子」
「……………」

すぅすぅ寝息をたてる月子は変わらずそこにいて、ほっとする。

「………お前は強いから大丈夫だって信じてる」

ぽつりと呟いたその一言を、眠る月子はきいちゃいないけれど、琥太郎は希う。

「きえてくれるな」

Nape/首筋
title/ユグドラシル
110324
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