さみしさかんか

世界にはこんなに人がいるのにどうして、自分はこんなに孤独なんだろう。
見なれた白い天井をじっと見つめて、哉太はそう思った。
自分の腕に突き刺さった針から、チューブ、そして点滴パック。
ぽつぽつと液体の落ちる音が聞こえて、ひどくさみしい。
ああ最近は、なんだか体調が良くない日が多い気が、する。

「……………月子」

ここにはいない、彼女の名を呼んで、返事が返らないことを悲しいと思った。
目から、何やら温かい液体が流れ落ちていく。
それが涙だ、なんてことを哉太は絶対に気付かない事にする。
強くなりたいと、強くなるのだと、決めた。
あの日、諦めていた想いが通じた夜に、月子を守れるだけ強く、強く、強く。
そのために、まずは自分を自分で守れるようにならなくてはいけない。
少なくても、無理して倒れて泣かせたりなんかしないように。

「……………っ」

だから、冬休みの間はきっちりと治療を受けようと思った。
そう言った時、月子は「ちょっとさみしいけど、嬉しい」なんて言ってはにかむように笑ってた。
その顔を思い出して、哉太は目尻から滑り落ちた滴を拭う。
まだまだこんなところでべそべそしてるわけにはいかない。
きっと、月子にだってさみしい想いをさせている。
それでも笑ってくれた彼女に、負けるわけにはいかない。
けれど、だけど、わかっているけれど。

かたかたと鳴る窓を見れば、雪が降っていた。
しかも、吹雪いている。
室温調整が完璧なはずの病室なのに、どうしてか。

「さみぃな……」

ひどくさむい、と哉太は思った。

「さみぃな、月子」

世界には、たくさんの人がいるはずなのにどうして自分は一人でこんなところにいるんだろう。
そんなのは、自分で決めたことだってことはちゃんと哉太はわかってる。
これからずっと一緒にいるために、ちょっとだけ離れてる、それだけ。
わかってる、そうちゃんとわかってる、わかっているのに。

ぽろりと、また目から温かい液体がこぼれおちた。





ここは、さむいし、さみしいよ。





もう一度、滴を拭って、寝てしまおうと哉太はぎゅっと目を閉じた。

Zillion/無数
title/ユグドラシル
101028
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