「……いらない…です…」

「………え?」


ぽたぽたと、ビニール傘に落ちる雫の音に混じって
小さく、呟かれた言葉。


……いら、ない…?


確かにそう聞こえた言葉に、俺は耳を疑う。
え…何で……?
要らないって…


「…えっ…七瀬……!」


“ごめんなさい…。”


すれ違いざまに言われた言葉に動けなくなって

無機質に一定の間隔で落ちてくる雨音の中
何度も何度もその言葉は頭の中でリピートされていた。


―――――……
――……


『…おい、もしもし?!もしもーし!』

「……え?…あ、わりぃ」

『聞いてんのか?惟月(イツキ)』

「ああ…聞いてる。」

『んまー、とにかく!今から俺んち来いよ!』

「え?」

『じゃーな!』

「………」

『ツー、ツー…』

……え?何だって?
今から隼人の家?
…まぁ近いからいいけど、何で隼人の家に行く事になってんだ…?



……もう外は真っ暗なわけで
今日は馬鹿に寒いわけで
更に雨が追い討ちをかけるわけで


「…あー……、」


何で俺、
こんなんなってんだ?


3月15日
何が悪かった?


1日過ぎたから?
もう今日はホワイトデーじゃないから?


“ごめんなさい…。”


……そっか
…フラれたのか、俺。


「は…だっせー……。」











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